クリスマスの夜に その2

やっぱりこのまま終わりじゃ不完全燃焼。

でも濃厚には書けない週末。

それでもクリスマスが終わるまでには仕上げたいということで勢いで書き上げました。

*

いつもより素直に思える牧野。

唇を離すのももったいなくて、息をするのも忘れてる。

唇を首筋にずらした瞬間に耳元に触れるため息交じりの吐息。

切なすぎる声は俺の名前をたどたどしく呼ぶ。

「どう・・・みょう・・・じっ」

「ま・きの・・・」

喉元からこぼれる俺の声も熱い。

キスだけで満足したい気持ちとできない本能。

このまま押し倒したい感情はそのまま俺の体を支配していくみたいだ。

はじめてが車の中なんてムリだよな。

ここで強引に進めたら元も子もなくなる。

そのくらいは学習済み。

「道明寺・・・」

俺の束縛から逃れるように抜けかけた力が牧野に戻ってる。

俺・・・

牧野が逃げる様な抵抗見せるところまでまだいってねぇぞ!

「やっぱりね、この格好じゃ釣り合わないよ」

お願いだからって哀願を潤ませる瞳。

そんな目で見るなッ。

収まりかけてた野蛮な感情は原始的過ぎるほどの短絡さで俺の身体に広がってくる。

その熱を逃す様にハーッと息を吐き出した。

そのまま、身体を回して後部席に手を伸ばす。

「これ」

「なに?」

牧野の手に渡す紙袋。

それには牧野も知ってるはずのブランド名が刻印されている。

「俺からのクリスマスプレゼント」

「いらないとかいうのなしな」

今着てる服と全部とっかえれば俺の横に並んでも見劣りしない可愛い彼女が出来上がってるはずだ。

服もコートも靴もバックも一揃え俺が選らんだ。

「このブランドのトレーナーでも数万円・・・」

「考えるのやめる・・・」

さっきの熱は完全に冷え切った表情の牧野。

プレゼントを渡すタイミングを外してしまってる。

「ごめん、私なんのプレゼントも用意してない」

珍しく反論なしの牧野。

胸元には俺の贈った服を大事そうに抱きしめてる。

「その服を脱がせる特権をプレゼントしてくれればいいけど」

冗談ポイ声色で牧野を見つめる。

困ったような表情をうかべてる牧野を想像して心の中では苦笑中の俺。

さっきまで俺の舌先で開かれていた唇がクッと声を押し殺す様に閉じてる。

喉元がごくりと何か固いものを飲み込む様に上下した。

「いいよ」

呟く声はあまりにも真剣で・・・

頼りなくて・・・

消え入りそうで・・・

牧野の不安な感情を無視してもかまわないくらい喜びそうな俺。

胸の中の感情は小躍りして飛び上がってくる。

ハンドルをギュと握りしめた両手も落ち着かなくなった。

アクセルを踏む右足も心なしか震えてる。

そのまま走り出した車は一緒に祝おうと用意したホテルへと向かう。

最上階のスイートルーム。

そこから見下ろす夜景がきれいなんだ。

そんなことはどうでもいい。

牧野が隣にいれば。

助手席には無口すぎるほどの牧野。

チラリとみる横顔は時々何か考えるみたいに視線を遠くに向けている。

消え入りそうな影。

逃げないように伸ばした手で牧野の手のひらを包み込んだ。

一瞬ピクッとなった指先はそのまま俺の手の中で静かに納まった。

「よし」

いきなり上がる牧野の声。

「よしってなんだ」

「気合を入れた!」

振り向いて牧野が俺をニコッりと見上げる。

「プッーーー」

「なに笑うのよ」

「色気ねぇって言うか・・・お前らしいなって・・・」

きっと・・・

今のお前は心臓はバクバクでたまんないんだろうけど。

俺も一緒だ。

小さく笑いをもらす俺の横でぷくっと膨れる牧野。

車は交差点でハンドルを右にきってクリスマスのライトに包まれるにぎやかな街並みに吸い込まれて行った。