思い出は虹色に輝く 2

このお話の設定はつくしが大学入学直後のお話になってます。

二人の関係はどこまでいってるすぇってい~(設定)なのか?

蛇の生ころがしは継続中なのかどうなのか?

1を読んだだけじゃわかりませんよね。(^_^;)

 

*

久しぶりの大学。

最初に目で追うのは相変わらずまじめそうに教科書を胸元に抱え込んで構内を歩く牧野。

はなやかな春の装いには程遠い洗いざらしのジーパンに半袖シャツに薄めのカーデガンを羽織っただけのラフな格好。

素肌に近い薄化粧

男にどう見れてるのかは、まるで無頓着。

それでも異性に好感触の印象を与えてることは俺が一番知っている。

つややかな黒髪は肩を覆い、まっすぐに見つめる意志の強さを秘めた大きな瞳。

うるんだ瞳の中に映るのは俺だけの特権。

歩く速度が時々ゆっくりと変わる。

考える素振りでしかめた眉もかわいらしく見えてしまう。

牧野が俺の彼女だと知らないやつはこの大学ではいないはずだから牧野に声をかけようとする命知らずはいない。

はず・・・。

じっと牧野を見つめる一つの視線。

命知らずがいた。

話しかけたげな態度で近づいた男に、牧野は気が付かずにその前を素通りした。

牧野に気が付かれもしねぇ。

満足げな気分が胸の中に広がる。

唖然とした男が牧野を追いかけようとした瞬間に、俺は、後ろから手を伸ばして男の動きを止める。

「あいつに声をかけようなんていい度胸だな」

「えっ?」

振り向けずに驚愕気味に身体をこわばらせる男。

俺が誰だかはわかってる様子。

牧野が気が付いてないことを確かめながら「気安く声をかけられる相手だと思うなよ」

「あいつは俺のだ」と、冷たく言い放つ。

「すすすすすいません。知らなくて!」

もたつく足で逃げていく男を眺めてた。

1年前なら血を見てる。

モテるって自覚のない牧野にいつも俺がヤキモキさせられる。

他の奴も牧野に手出しできないように、さっきの奴を見せしめ的に殴ってた方が良かったか?

牧野は俺の熱い視線にも気が付かないままに前を歩く。

気づけ!

鈍感な奴!

いつ気が付く?

気が付かないままに右に曲がって図書室に消えた。

いくつもの本棚を通り過ぎて人の少ない奥の一角。

牧野の探してる書籍は天井近くの棚の上。

根性で取るって態度でつま先を立てて、伸ばす指先。

目標まで数ミリ足りそうもない。

数メートル左横には踏み台もあるが気づいていないようだ。

足音を忍ばせて牧野の後ろに位置を取る。

俺の気配にも気が付かずにまだ伸ばしてる指先。

意地でも自分で書籍を取る気だ。

無理だツーの。

笑いをこらえるのも苦労する。

「無理するな」

驚いたように振り向いた表情はすぐに柔らかい笑顔に変わる。

「よく私がいるのわかったね?」

「お前が居る所ならすぐにわかる」

わずかに色づく頬。

照れくさそうに視線を外して小さな声が「ウソっ!」って聞こえた。

表情だけは素直に会えてうれしいって俺に伝えてる。

「図書室に入るのが見えたんだよ」

クシャッと髪の中へ指先を絡めるように滑り込ませる。

絡みつく髪の一本も愛しいって俺の気持ちをこいつは分かってくれてるだろうか?

唇で触れる黒髪。

そのまま背中ごと両手で抱きしめる。

少し体を丸めて触れ合う頬。

牧野の温もりを確かめるように両手に力を入れる。

「1週間ぶりだね」

甘えたような甘い声が牧野の胸元で交差した腕に温かく触れる。

「突然仕事をふられるから困る。やっと片付いたからしばらくは大学に通える」

「今日は俺んちに来る日だろ?」

牧野を振り向かせるように腕の力を緩める。

母親が牧野を認めた日から始まった『道明寺家の嫁、養成プロジェクト』

牧野が大学を卒業するまでの4年計画で実行中。

週の半分は俺の家で牧野は過ごしてる。

過ごすって言っても牧野のガードは相変わらず硬い。

それでも、挑戦!って、思うのは男の性というやつだ。

いい雰囲気になることもあるしなッ。

「なに、ニヤついてるのよ」

目の前の牧野の頬がぷくってふくれてきた。

「ニヤついてねェだろう」

「変なこと考えないでよね」

考えてるの牧野じゃねぇ?

そんな声はここでは胸の奥に閉じ込める。

口にしたらガードが固くなるのは経験済み。

「考えてねェし」

「考えててもダメだからねッ」

子どもを叱るような口調。

「あッ!」

なんでって疑問符が完璧に俺の顔を占領中。

「することいっいぱあるんだから」

俺もしたいこといっぱいある。

言いそうになった声を消音に変える。

「それじゃここで済ませる」

「えっ!」

拒否する暇を与えずに牧野に身体を押し付けた。

牧野の逃げ道は背中は本棚が塞いでる。

俺の胸元を押すように動く腕も、まったく力が入ってない。

唇は半開きのままで柔らかく俺を誘う。

重なった唇。

牧野が瞳を閉じて俺のキスに応じるように絡めた舌先。

つーのは、俺の単なる妄想。

ガシッとしっかり閉じた唇。

相変わらず素直じゃねぇやつ。

身体にかぶった殻を外すのは簡単じゃないってわかってる。

外す方法も今ではずいぶんとわかってきたつもりだ。

牧野の細い腰に回す腕。

そこから、ゆっくりとなぞるように上にと移動させる指先。

牧野を逃さないように頬を両手で持ち上げて唇をむさぼる。

観念したように漏れる甘い声。

わずかに開いた唇からいつものように舌を滑り込ませた。

「誰か来たら困る・・・」

こんな奥まったとこまで誰もこねェよ。

それに俺を見たら近づかないと思うぞ。

「大丈夫だ」

「大丈夫って?」

下から覗き込むように俺を見つめるうるんだ瞳。

煽ってるようにしか思えない。

「こうすれば外からお前の姿は見えない」

すっぽりと俺の胸の中に牧野をしまい込むように抱きしめた。

拍手コメント返礼

なおピン様

このお話を書いてるときはほとんど頭の中はドラマで再現しておりました。

こんなところ見たい~ってほとんど願望です。(笑)