ソラノカナタ 39
『騒ぎは大きくなるためにある』
お話を考えてるとこんな格言がありそうな気になります。
「思ってない!」
つくしには言われそうですが・・・
たぶん周りのみんなは思ってるはずと確信してます。
*ずけずけと遠慮なく俺を見つめる視線。
大きく見開かれた瞳が俺と視線を交わしてわずかにほっそりと動く。
クスッと小さく笑った唇。
類!
しょうがないとか。
ヤッパリネとか。
嵐が来たとか思ってんじゃねぇよ。
「事実無根の記事が出た時の覚悟を決めて写真は撮れよ」
一斉に俺に向かって光るフラッシュ。
鋭い俺の声に、レンズが打ち抜かれた様にぴたりと止まった。
雑誌なんて発売までにどうとでもなる。
出版社にテレビ局に圧力をかけるのに大した力はいらない。
大手スポンサーの力を甘く見るなよ。
アリが食べ物に集って姿を隠していた入り口までのわずかな距離。
マイク片手のレポーターの動きは数歩後ろに下がる様に身を引きだした。
「道明寺のTOP?」
「なんで」
小さなざわつきだけがこそこそと聞こえる。
少しの乱れを突くようにそのまま敷地の中に入った俺の前でベルを鳴らす前に玄関のドアが開いた。
背中には我に戻ったレポーター達の「ここにはなぜ?」って意味の質問が虚しく響いてる。
「婚約者を迎えに来た!」
俺の心の声も虚しいもんだ。
「騒ぎを大きくしないでいただきたい」
「王子の母国と道明寺は友好関係を結んだばかりなのですから」
今回の不必要な突発的スケジュールの調整は、それが条件だと俺の後ろにぴったりとくっ付いてる西田が目を光らせる。
忌々しい視線は今のところ有効に俺に作用中。
出迎えたのは執事的風貌の初老の男性。
ご丁寧に品よく下がる頭。
スキのない動きは主の質の良さを表している。
面白くねェッ。
こわばった表情の牧野の横で柔らかな笑みを浮かべてる類。
「どう・・みょ・・・じ」
遠慮がちに聞こえた声は不安げな牧野の気持ちを俺に教えてる。
荒いことは考えてない。
心の中はぐだぐだ煮立ってはいても、感情を抑えることも学んでる。
心配するな!
抱きしめて言いたい気持ちを押し殺してこの屋敷の主の前に足を進めた。
「ご迷惑をおかけします」
迷惑かけんなよな!の翻訳付き。
王子は意外そうな表情を浮かべて口元を崩す。
「迷惑じゃないと言ったら?」
兄妹で俺にケンカ売ってんのかッ!
「時間の無駄ですよ」
頭の中ではガシッと襟元を掴んで締め上げている。
「道明寺ッ」
俺の腕を抑え込むように牧野に掴まれてたいた。
「今回のことではお前を責めるつもりはないから」
なに言ってるの?の気持ちを貼り付けて見開く瞳。
俺がここに飛んできた理由が分かってないって・・・ねェよな?
「道明寺がここに来て私との関係がバレタラ大騒ぎだよ」
王子のお相手は誰だ!で騒がれてるのはどうなんだ?
「お前は王子との関係を勘違いされたままでいいわけだ」
くすぶっていた苛立ちはそのまま冷たい声を俺に出させてる。
「まだ・・・私の存在ってばれてないわけでしょ?」
「俺と一緒に出ろ」
握られた腕はとうの昔に離れて牧野が逃げないように身体ごと俺に抱え込んでいる。
「出ろって・・・」
ぶつかりそうな互いの鼻の先でにらんでいる俺とキョドッとなった牧野。
「王子の思い人で騒がれるのと俺との結婚で騒がれるのとどっちを取る」
「どどどっちって・・・」
もたついた声はそのまま悩みこむ表情を作り込む。
そんなに悩む事じゃねぇだろう。
こいつは俺をイラつかせる天才だ。
「答えは決まってる」
落ち着いた声の主はカーテンの隙間からちらりと窓から外を眺めて俺たちに視線を移した。
拍手コメント返礼
なおピン様
嵐が来たらうれしい~と思ってる私。
どちらの嵐も楽しめそうですしね♪
『司と行くべきか、行かないべきかそれが問題だ』
どっちでも大変なのはつくしちゃん♪
ゆげ様
荷物もそこそこで我が家にお越しいただきありがとうございます。
お留守の間にもお話はしっかりと更新させていただきました。
とっは言ってもまだまだ一日1話が限度で~。
お留守の間に衣替えもしちゃいましたよ。
>嵐が来たとか思ってんじゃねぇよ。この一文を見た時、私の脳内は、嵐の松潤でした(笑)。
うれしいなぁ~。
ブスッとつぶやく松潤を想像していた私です。
>つくしちゃんの2択は、つくしちゃん的には、出来ればどっちもヤダという究極の2択ですね(笑)。司を選ぶしかないから、1択かな?(笑)。まさかの3択目があるのか?!楽しみ~♪
最近読まれてるな・・・(^_^;)
幾人かに第3択目の存在を予想されてます。
正解!