FIGHT!! 41

ここからどうするか?

悩んでいたのは甲斐さんじゃなくて私でした。

FIGHT!!

*

「ずいぶんあるんですね」

道明寺フォールディングス本社ビルにある事務所内。

応接室のテーブルに並べて置いた幸せいっぱいの笑顔が写るパンフレット。

急いで逃げ出したはずの甲斐さんが「情報を仕入れてくる」と意を決して引き返して取ってきた戦利品がこれ。

私と司の結婚式って・・・

すでに準備されていて・・・

結婚式で着るウエディングドレスに、招待状、披露宴の料理に引き出物、結婚式の準備に追われる時間は経験してないんだよなぁ・・・。

私の想像できるのは一般的な結婚式だから、どれだけ当てはまるかわかんないけどね。

思わず遠い目になってしまった。

「結婚したあとでもこの会社を利用する人たちも多いらしいよ」

「ほら、今結婚式をやらないカップルも多いでしょ」

「子供も生まれたあとに家族一緒で結婚式を挙げるパターン」

それならことは簡単で、ご主人が阿賀野さんに内緒で結婚式を計画?

奥さんを喜ばそうと内緒で結婚式を進めてるってこと?

それならいい話じゃないか、ということになる。

まて・・・

待てよ・・・

確か一度訪れた阿賀野さんの自宅は家族写真がいっぱい飾ってあってその中に、ばっちりウエディングドレスで写真立てに収まった阿賀野さんがいた。

阿賀野さん、結婚式を挙げてるはずだよ」

そうなの?って甲斐さんが気の抜けた顔になった。

トントン。

軽くドアをノックする音。

テーブルから頭をもたげたまま甲斐さんと同時に身体が固まった。

「こんなとこにいたのか」

やたら機嫌のいい司。

テーブルの上のパンフレットをバタバタと裏返す甲斐さん。

それって・・・

余計な興味を司に与えるって思う。

「何をやってた?」

ほらッ!もう!

司の声が半音低くなってる。

「なにやってるって、仕事に決まってるでしょ」

心臓が飛び出そうな緊張を隠すつもりが落ち着きをなくさせてしまってる。

「弁護士には守秘義務があるんだからいくら司でも見られたら困るものあるのッ!」

「これがなんの秘密だ」

テーブルから落ちていたパンフレットを拾った道明寺が目の前でピラピラさせていた。

「これも仕事の一部なの」

司の手からパンフレットを奪う様に身体を伸ばした。

何の執着もないと言いたげに、抵抗も見せずにパンフレットは司の長い指の合間から床に落ちてパラリと音をたてた。

南国の島のチャペルで挙げる結婚式。

虹色に縁取りされて3Dに浮かび上がる文字。

不敵な笑みを浮かべる司が見えた。

こんな時の司は一筋縄じゃいかない。

頭が冴えてる!

冷静過ぎる判断力と実行力。

ここでカリスマ経営者の実力を発揮しなくていいからぁぁぁぁぁ。

思わず神に祈った。

「もう一度結婚式を挙げたいなら素直に言えよ」

「お前の望みはなんでも叶えてやるって言ってるだろう」

ゆっくりと柔らかい唇の感触が耳元に触れる。

耳朶に軽く甘え噛みする歯の感触。

ビクッとなる刺激から思わず逃げるように身を引いた。

冗談っと言いかけた声は呆れすぎて音にならない。

「僕は、お邪魔かな・・・」

ホンのりと顔を赤らめてる甲斐さんが見えた。

甲斐さんまでテレさせるって・・・

人目も気にせず迫ってくる司の艶って刺激が強いんだからっ。

自覚してほしいッ。

贅沢な悩みだ。

「こそこそと、何かやってるって思ってたが、俺のことをモデルとか粗暴とか思っていた奴の手助けしてる様だな」

あっ・・・。

なんでわかる?

まじまじと司を見つめてしまった。

「俺が、相手にしなかったら甲斐に頼んでいたわけか・・・」

ジロリと司に睨まれた甲斐さんは速攻で応接間から退散していった。

だんだんと甲斐さんに逃げ足も速くなった気がする。

いまさらそれを恨む気持ちもおこらない。

「黙っていたのは悪いけど、そんなに難しい事にはならなそうだし、駿が英徳に通う間は仲よくしておかないとね」

笑顔を作っても頬が引きつる。

「へぇ、お前が英徳の保護者と仲よくする気があるとは知らなかった」

皮肉たっぷりのふてぶてしい顔が私の鼻先に迫る。

冷ややかな顔がここまでカッコいいのも困る。

視線が外れなくて見入るって、我ながら緊張感がない。

英徳の学生の質はお金の質。

通学には送り迎えは運転手つきの高級車。

学生の頃から身に付けてるブランド物を自慢しあう休み時間。

高校はブランドの品評会じゃないと妬み心より自分の力で手に入れたものじゃないだろうと自慢げに見せあってる同級生を呆れて見てたものだ。

あなたには買えないわねの上から目線には卑屈にはならない。

その最悪が道明寺財閥のお坊ちゃんだったんだけどな。

第一印象が最悪だと思った相手を、今は一番愛してるって人間の縁とはわからないものなんだよね。

その愛しい顔はますますと至近距離になった。

睫毛同士が触れあいそうな位置で見つめる黒い瞳

司の息遣いが口元からわずかにずれて頬に触れる。

わぁぁぁー!

「それより、何しに来たの」

飲み込まれていくような魅力から逃れるように両腕を司の胸に突っ張った。

「ずいぶんな言い草だな」

「会いたくなったからってのは、理由になんねェの?」

司の目元が細くなって瞳が優しい温かみの色を浮かべてる。

そうなのか・・・。

髪の生え際まで真っ赤になってる気がする。

「久しぶりに社員食堂のまずいやつ食いたくなった」

悪戯っぽく笑った司が、私の腕を掴んでズンズンと引っ張って歩き出していた。

お――――ッ!

こける!

転ぶ!

危ない!

ーーーーーーーじゃないッ!

社員食堂が騒ぎになるつーの。

社員食堂♪

懐かしいな~~~。

この後の騒ぎは書くべくか書かずに話を進めるべきか・・・

どっちだ!!

応援のプチもよろしくお願いします。 

 ブログランキング・にほんブログ村へ

拍手コメント返礼

kawachi1gou様

社員食堂で見せる司の姿楽しいですよね。

一コマ了解しました♪