秘書西田の坊ちゃん観察日記 47 (ドッカン 38 番外編)

かえまま様のリクエストにお応えして久々の日記です。

この話は『ドッカン38』の番外編となります。

ピュルピュル~。

デスクの横から聞こえてきた紙を吐き出すファックスの音。

片腕を伸ばして排出された用紙を手に取る。

件名 記入なし

送信者 記名なし

要件のところに大きく3行で書かれた黒い文字。

『実家に帰らせてもらいます』

配信元を確かめなくてもわかる。

つくし様・・・

ファックスは代表のデスクの側にもあります。

つくし様の実務研修が終わって後期司法修習で揉めたお二人のとばっちりが私の上に降りかかる。

予測はしてました。

・・・が

結婚して3か月もたたないうちにこの文面が届くとは思ってませんでした。

つくし様・・・

老婆心ながら坊ちゃんから逃げれるものではないと私は思いますが・・・

用紙の文字を見ながら思う。

その前にこの文面の意味を坊ちゃんが理解できるかどうかが甚だ疑問。

『しばらく帰らない』

『顔もみたくない』

単純にこの文面の方が代表は理解できるかと思う。

これだとすぐに怒りの矛先は私に向けられて、それはそれで疲れる気がした。

「室長、どうかしましたか?」

そう言ってファックスに視線を移した部下が悪いものを見たとでもいうように気まずい表情を見せる。

「勘違いしするな。私の問題じゃない」

家庭の問題を仕事に持ち込むと思われるのは心外だ。

代表の場合は例外ですが・・・。

用紙を持ったまま立ち上がって代表の居る執務室に向った。

「えっ?うそ?代表?」

聞こえた声はこの場で収まるはずだ。

ほかに漏れる心配はない。

秘書課で見たものを他言しては仕事の能力を疑う。

「ギャーッ、今日は機嫌悪くなりそう」

「明日にはたぶん大丈夫じゃない?」

「最近代表は出社時は機嫌いいよね?」

「冷たい表情もいいけど、優しく笑うと品位が上がるっていうか、秘書の特権」

結婚した代表の評価は上がってると思いたい。

書類にペンをはしらせる代表の目の前に送られてきたファックスを無言で差し出す。

「なんだこれ?」

チラリと一瞥してそのままシュレーダーで刻みそうな表情が浮かぶ。

今の代表にとってはどの書類より重要な極秘書類ですよ。

「つくし様の直筆だと思いますが・・・」

ラブレターじゃねえのか?

そんな表情で私に疑問を投げられた。

つくし様の性格じゃ間違っても脅されても送ってこないと思います。

状況を把握してない代表はまだ余裕。

それが次の私の言葉で焦るに変わるのが目に浮かぶ。

「どういう意味だ?」

「普通、夫婦喧嘩のはてに怒って、もう別れてやる!という気持ちで家を飛び出す時の捨て台詞です」

「良かったですよ、離婚届は送られてませんから」

私なりの冗談で離婚届を付け加えてみた。

慰めにもならないと思いますけどね。

「別にケンカも何もしてねえぞ」

・・・・・

「屋敷から修習所に通うってできねェよな」

昨日代表がそうつぶやいた時から私はうすうす気が付いておりました。

つくし様との言いあい。

無駄だとはわかっていてもだから「ごり押しはことを複雑にしますよ」と忠告したのです。

態度には出さないが心の中では頭を抱えい込んでしまってる。

何もわかってらっしゃらなかったか・・・。

何年つくし様と付きあってらっしゃったのですか!

今度の様なことはいくらもあったはずです。

道明寺の力のごり押しはつくし様がもっとも嫌がることなんですから。

「後期の司法修習の件だと思いますが」

「ヘリで通えって提案しただけだぞ」

「あれは提案じゃなく強要です」

「ヘリで通えると言ったのはお前だろうがぁ」

「私は代表に聞かれたから言ったまでのこと、後は勝手に代表がつくし様に・・・」

ここで責めるべきは代表ではなく如何に早く事を収めるかにかかる。

表面は代表に焦ってもらって裏で私が動く。

まずはつくし様の行動範囲の分析。

素直に実家に戻るとは思えない。

代表がすぐさま牧野家に乗り込むのはつくし様もわかってるはずで・・・。

となると・・・後は・・・

大体の予測はできました。

明日までに状況は元に戻りそうだ。

「何とかしろ」

「何とかしろと言われましても、夫婦喧嘩は犬も食わぬと申しまして、当人同士で対処された方がよろしかと思います」

まずは代表がしっかりつくし様を探して反省してもらわないと事は進みませんから。

サルでもできる反省の姿勢が代表には超難問。

だから、てきめんにつくし様にも効力を発揮できるというものです。

「もう、おまえには頼まねェよ」

代表の膨れた表情を見るのが楽しいと思える幸せ。

そんな代表も私は好きです。

「夕方からのスケジュールは白紙しておきましたので心置きなくどうぞ」

ムッとなった表情からわずかに唇がほころぶ。

私に気が付かれるのを嫌がる様に引き締まる口元。

頑張ってください、ぼっちゃん・・・

声に出さずに心の中で呟きながら頭を下げた。

さて・・・

その間に私は次の手立てを考えておきます。

楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。

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拍手コメント返礼

rui 様

久々の西田さん日記です♪

喜んでもらえてコメントまでいただけてうれしいです。

かえまま様リクエストしてくれて感謝ってrui 様がコメントしてますよ~。

b-moka

12月は何かと忙しいですよね。

私もそろそろ年末の大掃除に取り掛からないといけないのにブログの更新に時間を使い過ぎてしまってます。

冬休みに入ったら娘を使おうという魂胆アリです。

西田さんの日記は他の連載と絡めながら番外編として終われないんですよね。

来年も続く~。

プンちゃんのママ 様

待っててくれてありがとう♪

その言葉が次の作品につながります。

別館でも西田さん活躍してるからなぁ・・・

あっちはどうしよう・・・(^_^;)

かえまま 様

おはようございます。

きっとね、リクエストいただかなければ西田さん日記はスルーしていたかもしれません。

西田さんが出てくると書こうかなとは思うのですが、あと一歩の後押しがリクエストで~。

後押しもらえると書くぞ~♪って気になれるんです。

リクエストに私も感謝してますよ。