パズルゲーム 4
類君が登場すると司君が退場する~。
司君がそばにいる状況でこそっと類君に会いに行くつくしちゃんという想定も考えてるんですけどね。
そうなるとつくしちゃんの緊張感はすごいだろうなぁ。
「どこに行く?」
「どこに行くって?ししっ仕事に決まってるでしょ」
「だからどこの仕事だ?」
「さあ・・・・甲斐さんについて行くだけだから知らない」
「へぇ」
きらりと光る司の目。
なんて場面もどうでしょう?
「花沢類さんに会いたいんですけど」
「アポイントは?」
受付でどうしようかと悩んでる表情で考えこんでる牧野を見つけた。
「お名前を」
「えっ?」
ぎょっと見開いた瞳、瞬きの回数が多くなってる。
きっと、道明寺つくしと告げるべきかどうなのかで悩んでるんだろうって分る。
道明寺って告げたら今度は受付の女性の表情が困惑気味に変わるはずだ。
牧野はどうするのだろう。
牧野の動揺が手に取るようにわかる。
クスッと緩んだ頬を直ぐに引き締めた。
「まーきの」
助けたのは牧野が困ってるからか、俺が困るかだから、どちらだろう。
道明寺つくしの名前は意外に広がってるから、すぐに気が付く人間も多いはずだ。
俺と司の関係なら牧野が尋ねてきても何の違和感もない。
今はまだ道明寺司の妻だとバレタラ意味がない。
「いいいいつから?」
背中を向けたままに背を逸らして牧野の顔が逆さのままで俺を見つめる。
反り返ったままの無理に体勢。
そのまま倒れ込みそうな牧野の身体を助けるように肩に手を添えた。
「折角、迎えに来てやったのに驚かなくてもいいんじゃない?」
身体の向きを変えて牧野の腰に手をまわす。
ビクッと身体の筋肉に力が入る反応は昔から変わらない。
司と付きあう前も後も。
俺が牧野を好きになる前も後も。
「恋人役だから我慢して」
腰を折って耳元に近付ける唇。
「きゃー」
周りから聞こえる声に見せつけるようにつぶやいた。
「やり過ぎじゃないの?」
「司が見たらただじゃすまないだろうね」
染まった頬で見つめるキラッとした輝きの純な瞳。
責めてるような、照れてるような表情を浮かべる牧野。
牧野に好意を寄せるやつなら・・・
無防備に寄せられるあどけなさは相変らずで守ってやりたくなる。
それなのに今の俺は牧野に無理難題を押し付けてしまってる。
最上階に戻れば俺の花嫁候補が待ち構えてる。
新しい秘書として身元を隠して送られてきた若い女性。
取引先の令嬢だと分かったのは1週間前。
鼻についた態度はどう見ても甘やかされて育った傲慢さが見える。
そしてそれが俺の前に出ると媚を売る態度に変わる。
ごめんな。
どうしてもこの役は牧野じゃないと務まらないんだ。
エレベーターに乗り込み、ドアが閉まるのを確かめて牧野の身体から腕を外した。
「その格好を見てると流石に弁護士には見えないね」
知り合ったころの10代の牧野が目の前にいる。
「どうせ成長してないから」
「それより、顧問弁護って何でよ!?」
拗ねてた牧野が息を吹き返す。
「顧問弁護士なら仕事がらみで牧野を呼びつけても問題ないでしょう」
「花沢類だけじゃなく西門さんや美作さんもってどんな意味合いがあるのッ」
負けん気の強さ満々で牧野が俺に詰め寄る。
「俺だけだと司が変に勘ぐるだろうけど俺たち3人が揃えば司は遊ばれてるって思うだろう?」
「嫉妬心も3分割されるしね」
「3倍になるとは思わないの!」
「牧野、司の嫉妬3倍と3分の1ってたいして変わんないんじゃない?」
『あ』の形に開いた唇がそのまま固まって肌が発火しそうな色合いに変わった。
「司、帰って来たでしょう?」
「なんで知ってるの」
「一応、3人で顧問弁護士を依頼したことを、あきらから連絡を入れてもらったんだよ」
飛んで帰ってくるぞって総二郎とあきらは楽しげだった。
「もしかして、今回の花沢類の計画にはあの二人もからんでるって、事?」
確信を遠慮がちに確かめる視線。
「俺が一人で内密に動いたら、司にばれた時に牧野が困るでしょ」
「そこまで考えてるんだったら私を巻き込まないで欲しかったな・・・」
拗ねたような表情であきらめたように小さく牧野がため息を付く。
専務室に向うドアを開けて牧野を先に入室させた。
入り口そばのデスクの前にいた秘書が椅子から立ち上がったまま牧野にちらりと視線を向ける。
牧野を無視するように俺の前に差し出す書類。
「悪いけど、しばらく誰にも会わないから」
「この後の約束が有りますが?」
「すべてキャンセル。折角彼女が会いに来てくれたから」
牧野を見つめて自然と浮かぶ笑み。
俺に見つめられて直ぐに赤く染まる頬。
牧野じゃなければきっと俺は優しく微笑むなんてことは出来ない。
その俺に照れる様に赤らむ初心な牧野の反応。
俺たちを知らないやつが見たらどう見ても好意を持ってる同士だと思わせるには十分すぎる。
だから牧野じゃないと無理なんだ。
秘書に見せつける様に牧野を抱き寄せて奥の部屋のドアを開ける。
そのまま二人で部屋の奥に入ってドアをガチャリと閉めた。
お楽しみいただけたら応援のプチもよろしくお願いします。
拍手コメント返礼
まめすけ様
司と類のつくしに対する思いの違い。
根本は一緒なんでしょうけどね。
どんなふうにつくしちゃんとアツアツぶりを発揮するのか。
ライバルが負けたと白旗を上げるまで楽しんで~いやいや、頑張ってもらいましょう。
suiren様
想像以上と褒めてもらえて喜んでいます。
ここからご令嬢がどう対抗するのか。
どうせならつくしちゃんとバトルしてほしいな。(^^)