DNA で苦悩する 53(完)

週末は朝から夕方まで子供の部活の応援で、PCをまるまる二日開くことができませんでした。

ドキドキとしながら開いたメールソフト。

出来るなら別なことで胸をときめかせたい!!!(笑)

受信メール138通・・・

ぼちぼちと返信しますので、もうしばらく返事はお待ちくださいますようお願いいたします。

「来ないって言ってなかった?」

木の影を落とすベンチに座って憂いな表情を浮かべていた鮎川。

僕の問いかけに悪い?と言いたげな表情がクスリと笑顔を作る。

たぶん、鮎川を笑顔にさせたのは僕の有頂天な表情だと思う。

「いじめられたんじゃないかと思ってんだけどなぁ」

からかう調子の声を発してベンチから立ち上がった鮎川がみせる大人びた顔立ち。

「誰に?」

「君は素質がある。とか、うまいとか言われてその気にはならなかったよね?」

「わりと簡単にOKが出たからこの時間に終わったんだぞ」

褒められたり、おべっかを使われることには他の奴らより何倍、何十倍も慣れてる。

それをそのまま信用できないことも自覚してる。

僕自身じゃなく道明寺の家柄がすべてだってことも。

たぶん、まだ僕がこのCMのスポンサーの息子とは気が付かれてないはずだ。

ヤバかったけど・・・。

「順調に終わったし、鮎川の父さんとも別に何ともなかったって思う」

やけに相手の女の子との絡みは要求された。

それが鮎川の父さんの仕掛けた罠って気はする。

さわやかな恋がテーマのCM。

相手の女優と息があったCM撮影。

演技とはいえ、なんとなく鮎川にばれたくないって思ってる僕がいる。

数か月後には黙っていてもばれるんだけどね。

「なにもなかった?」

「えっ?」

「駿君の相手ってさ若手人気ナンバーワンの子でしょ?」

CMの内容はまだ放映まで非公開のはずで、鮎川が知ってるはずがない。

「どうだったの?」

追求される状況はべつに何もないはず僕を確実に追い込んでくれる。

「ご丁寧に、うちのパパ、絵コンテ置いて行ってくれるんだもん」

スカートが揺れ動いて表情を隠す様に向けられた背中。

鮎川の表情が読めなくなった分気持が焦る。

CMの内容はしっかりい鮎川にばれてるってことだ。

怒るとか、拗ねるとか・・・

クールな鮎川の感情を読むのは苦労するんだぞ。

「鮎川が待ってるって聞いたらそっちの方がドキッとしたんだよな」

「相手の女の子の事なんてなんとも思ってないから」

自分の声は鮎川にどう聞こえてるのか・・・

返事のない沈黙で手のひらがジワリと汗を握る。

「そう・・・」

感情が読めない声がじれる心。

「こっちも向けよ」

鮎川の腕に手をかけて、引き寄せようとした瞬間傾いたのは鮎川じゃなく、僕の身体。

えっ?

なに?

「駿、なんで俺の許可なくスタジオから出るの?」

がっちりと僕の腕を掴んだのはマネージャーの田中さん。

「もう、撮影終わったから僕の仕事は終わりでしょ?」

「スチール撮影が残ってるの!」

「駿、こんな目立つところでナンパするな!売り出し前に恋愛の噂が厳禁だぞ」

ナンパって・・・

「あの子は知り合いです」

「知り合い?」

こそこそと耳打ちで話していた田中さんは身体を右に回して鮎川に視線を向ける。

僕と鮎川を数度交互に向ける視線。

「彼女か?」

「まぁ・・・」

「別れろ」

にべもなく強気な気迫で迫る。

「後は俺が」

「ちょっ!」

「彼女の父親は櫻井監督ですよ」

田中さんの表情が一瞬強張るのが分かる。

「駿・・・お前監督と知り合いなのか?」

鮎川と僕との付き合いを快く思ってないことは抜きにしたいけど、知り合いには違いない。

「そうか、だからうちの社長とかも目をかけてるわけか」

うんうんとうなずいて田中さんの表情が満面の笑みに変わる。

「駿、君の将来も僕の未来もすべて明るいぞ」

僕の肩を抱いた田中さんが遠く空を指さし胸を張った。

一昔前の学園ドラマの青春の一コマみたいに。

一緒にノレるわけがない。

「あっ、丁度、スポンサーの道明寺司も来てるんだぞ」

「この際、道明寺司にも駿、顔を覚えてもらえ」

「さっき美作社長の横にいたのは道明寺夫人らしいからな」

「お前のこと気に入ってるみたいににこにこ見てたから、きっと気に入ってもらえるぞ」

数分時間を巻き戻すことができれば、僕は鮎川を見つけた時点でこの場所から遠く離れたい。

「いやですよ!」

「そんなわがまま言うな」

「こんな機会滅多ないぞ」

駄々をこねる僕をなだめて、すかそうとする田中さん。

僕と道明寺司の関係を知ってる鮎川が我慢できないと笑い声を上げた。

ここで、親父に会ったら一発で僕の正体はばらされる!!

鮎川!

それ以上笑うなッ!

嫌いになるぞ!

このお話は一旦ここで終ります。

次回から新しいお話でこの続きを新装開店で再開します。

それまでしばらくお待ちくださいね。

拍手コメント返礼

ココア様

一旦お話を区切らせていただきました。

このままだとまだまだ終わりそうもなかったんですよね。

まだまだ続きのお話はあるので楽しんでもらえると思います。

田中さんは私も和也君タイプで想像して書いちゃってます。

何かやらかしてくれそうな行動力を持たせたいと思ってます。

あずきまめ様

ここで二人っきりと思わせて♪

なかなか思い通りに行かないジュニアの恋♪

それでも両親よりは楽なはずですよ~。

ハイ~♪

次の話もよろしくお付き合いをお願いします。

ゆうあ様

わい~良かった。

駿君の最期の叫びがタイトルにつながってると分ってもえてうれしいです。

次のタイトルも考えなきゃいけないんですよね。

DNAつながりでいいタイトルないかなぁ・・・

アーティーチョーク 様

続編への期待うれしいです。

まだまだこの二人から目が離せないという感じにお話を組み立てる事が出来ればいいんですけどね。

駿の正体を知った時の田中さん見ものでしょうね。

次のお話ではその場面をしっかり書いてみたいですね。

かえまま様

加川さん♪

懐かしいなぁ~

確かに同じ匂いがする♪

アソコマデカン違いされたら大変なことに巻き込まれそうですね。

それはそれで面白いかも♪

田中さんより加川さんの方が脅威だと思います。

skyminto 様

まだまだいろいろな事件を用意してます。

子供達の恋愛模様も簡単にはいかないかも(^_^;)

ポチタマ 様

まだいろんな想像が途中で~。

ここで終ったらぎゃーーーですよね?(笑)

次回に期待を残しつつ第1部が終了という感じです。

引き続きよろしくお願いします。

音ちゃん 様

田中さんが駿君の正体を知る瞬間気になりますよね。

私も絶対書きたいシーンです。

そうなんです~

加川さんにかぶりそうなキャラなんですよね。(笑)

綺羅 様

子供を見て血のつながりって感じることありますよね。

寝てる姿が旦那とそっくりな娘を見て笑い過ぎたことあったなぁ・・・。

そうですよ~

シッカリメンバーを使わせていただいてます。

ファンの方に怒られないといいんですけどね。(^_^;)