生れる前から不眠症 14

ただ今連載中のお話の中でこのお話だけが違った緊張感があるんですよね。

あきら君の自業自得とはいえ、ここに来てなんでこんなお話を考え付いたかなぁと反省しているところでございます。

葵ちゃんごめんねェ~。

*

「帰る。しばらく一人になりたいから」

葵は全てを察したように執務室から駆け出した。

「葵ッ」

追いかけるために駆けだした俺の前に差し出された1枚の写真。

小さな女の子と小型犬が写るありふれたもの。

「見たいかと思って持ってきたの」

濃艶な微笑は、なにが自分を一番魅力的に見せるのかわかっている微笑。

連れて歩くだけで人目を引く容姿に互いに満足していただけの、ただ、それだけの関係。

それで満足してるはずだった。

司らと入れ替わりに現れた橘 理紗。

葵に軽く会釈してコツコツと靴音を響かせて俺の前に近づく。

「この方が奥様。

可愛い方ね。好みが変わったのね」

挑戦的に笑みを浮かべる口元。

「葵に会うまで本気で人を好きになったことがなかっただけのこと」

未だに俺が自分に興味が有るとでも思ってる挑発的な態度が不愉快。

くどすぎる香水の匂いに葵が顔を歪めて口元を手で覆った。

「大丈夫か」

「大丈夫・・・」

葵の瞳の中に見つけた翳りの色あい。

一番見たくない表情をさせたのは俺。

か弱げな姿で、俺を拒む強い言葉を発して葵は背中を向けられてしまった。

葵を追いかけたいのに追いかけられなかったのは、自分に責任がある。

追いかけて抱きしめても振り払われる気がした。

拒む葵を俺は強引に抱き締める事が出来ずにその場に留まることしかできずにいる。

こんな時は無性に司の強引さが羨ましい。

「橘の会社を助けるつもりもないから」

時としてはすまなさを抑えながら冷酷に宣言できるようになった感情。

この女の前では非情さを臆することなく発揮できそうだ。

「別れるつもりでいるの」

未練なんて全くない表情で橘はつぶやく。

俺が橘にいまさら未練も興味もないってことを意識してない自信ありな誘いの眼差し。

「俺には関係ないね」

自尊心を傷つけられてワナワナと震える彼女の頬。

それを心地よく眺めていた。

「自分の子供を見捨てるの」

「まだ俺の子だと決まったわけじゃない」

「もしそうなら俺が面倒を見なきゃいけないのは、君じゃなく子供だけでいいはずだ」

スクッと立ち上がった彼女の腕が上にがって勢いよく振り下ろされた。

頬を殴られる寸前で俺の手が受け止める。

「葵以外に、殴られるつもりも、必要もない」

コンコンとドアをノックする音に橘の腕を離した。

「葵ちゃん、真っ青だったけど追いかけなくていいのか?」

部屋の中には俺しかいないような雰囲気で現れた総二郎。

「なんだ、そろってたのか」

ようやく橘に気がついたように特上の笑みを浮かべる総二郎。

橘と総二郎は面識がある。

商売用の微笑でも相手を惑わせるには十分すぎる笑み。

「面白い話をつかんできた」

「あきら、お前の親族に風間修一郎っているだろう?」

母方の親族で、年に1度会うことがあるかどうかの相手。

俺より2歳年上だった記憶がある。

「橘さん、あきらと付き合ってるときそいつとも付き合ってましたよね?」

「それに、あきらと同じような話を風間修一郎にも持ちかけてるそうじゃないですか」

刑事が犯人を追い込むような口調。

「だから、DNAも橘社長との親子関係を否定するものしか出してこなかったんですよね」

顔色を無くして立ち竦む橘理紗に、容赦ない総二郎の声が執務室に響いた。

何時ものお祭りコンビも今回は封印。

司より総ちゃんの方がカッコよく決めてる気がします。

わが家の総ちゃんはいつも影が薄いので今回は主役級で頑張ってもらってます♪

拍手コメント

あずきまめ 様

今回のキーマンは総二郎です。

ここで一番必死に動きそうなのって総ちゃんじゃないですか?

他人事だとは思えないだろうし(笑)

明るい光♪葵ちゃんにも早く届くといいですけどね。

ことり 様

別の話でも総ちゃんたいへんなんですよね。

今年はまだ1回しか更新してないんですけど・・・

どう進めるか悩みに悩んじゃってUP出来ずにいます。

まとまったら再開するつもりです。

実はUP出来ずに私の方が焦ってるんですよね。(^_^;)

あさみ様

叩き潰すのは確かに司担当が妥当ですね。(笑)

アーティーチョーク 様

ここはあきらより葵に肩入れしちゃいますよね。

あきらと総二郎には同情する必要はないですもんね。

マリエ 様

これで相手の女性に遠慮する必要なんてなくなったいましたよ~。

しかし、もっと質の良い女性と付き合いなよ~と書いた私が思っちゃいました。(笑)