恋の駆け引きは密室で 12

さて、いよいよ敵の正体が!

なんだ、たいしたことなかったじゃない。

司君もなんだかんだと言いながらつくしのこと信じちゃってるしなぁ~

・・・と。

胸をなでおろすのはまだ時期尚早ですよ~

*

斉藤 彩音 英徳大学 教育学部2年

父親は流通会社経営

両親と弟が一人の4人家族

都内在住。

世間一般のありふれた家族構成。

父親が会社社長だというのも英徳なら驚く対象にはならない。

花沢類が調べると言った次の日には、分厚い報告書が出来上がっていて、写真付きで私の目の前に示された。

「司の婚約者候補には上がったことがあるみたいだけどね」

それは私と道明寺が高校生の時で、私を快く思ってなかったお母様の仕業。

その候補が大河原 滋だけじゃないってことは私でもわかる。

英徳に在籍中のお嬢様の中には候補だった人は、何人いたのだろう。

道明寺が興味を持つはずもないし、私に向けられてる敵対視する視線を未だに感じるときがあるのも事実。

「気にするな」

軽く鼻で笑うのは道明寺だけ。

私の苦労なんて一生道明寺にはわかりそうもない。

「牧野と司を別れさせる意味が分かんないんだよな」

今の斉藤の父親の会社は経営危機の状況で、道明寺ホールデングスにとっての利点はない。

もし、牧野を巻き込んだって司が知ったらそれこそ会社はすぐにでも倒産。

経済に疎い私にもわかりやすく花沢類が説明してくれた。

「もう一人・・・男がいたこと牧野、黙っていたでしょう」

「英徳の学生じゃないところまでは突き止めたから」

斉藤の会社の社員の息子だと見せられた写真。

男の顔は目がかすんでいてあんまり覚えてない。

輪郭でさえ丸顔だったか面長だったか、それさえも分らないもの。

「もう少し調べる必要はあるみたいだね」

調べるって、相手に接触するって事?

今の私は花沢類を驚きと不安の感情のままに見つめてると思う。

「牧野?」

心配そうにビー玉の瞳が私を見つめる。

「牧野が哀しむ様なことはしないから」

私の不安な部分。

それはあの部屋に斉藤 彩音はなぜその男をあそこに呼んでいたのかって事。

頬に触れた息遣いは身震いするほどの嫌な感覚を思い出させる。

自分の意識とは裏腹に自由に動かなかった身体。

とぎれとぎれの意識は何も思い出せずに最悪なことが浮かんでは心を重くする。

道明寺を裏切ってなんかないよね。

下着は付けていたし、体の中に変な感覚が残っていたわけじゃない。

私の奥の記憶に残ってるのはきっと道明寺が残した痕だけだって思いたい。

私の見つけた小さなゴミの意味が私を苦しめている。

真実を確かめてそれが私を傷つける内容だったら、きっと花沢類は誰にも言わず自分の胸の奥に閉じ込めるんだろうって思えた。

聞きたくない結果でも私はきっと真実を知らなきゃ道明寺を真直ぐに見れないって思う。

「花沢類、どんなことでもわかったらすべて私に包み隠さず話してもらいたい」

「わかった」

数秒の沈黙の間に花沢類は全ての私の思いを受け止めて優しく微笑んで見つめる。

この人はどこまで私を慈しみ深く見つめてくれるんだろう。

優しさと穏やかさの感情が真直ぐに私を捉えて包み込む。

花沢類の甘えてばかりの自分。

花沢類が私を好きだと言ってくれてから半年も経ってない。

私は道明寺を選んでそれを祝福してくれた花沢類。

花沢類は今でも私のことを大事にしてくれてる。

その花沢類の気持ちを利用してるみたいに思えて、情けなくて、非情に思えて・・・

それなのに花沢類を頼り切ってしまってる。

F4の親衛隊に怨まれてもしかたない状況を自分でも作ってる気がしてきた。

送るという花沢類を必死に断ったのはこれ以上甘えられないと思ったから。

それ以前にもう完全に甘え切っちゃってるけど。

俯き加減でぽつぽつと足を進める。

大学の門を出たところで、今日、何度目かのため息を付いた。

「牧野」

路肩に止まった黒塗りの車。

車体に背中を預けたままのすらりとした長身。

一瞬で視線を集めるオーラ。

ざわついてるのは私の頭のなかだけじゃなく辺りも騒然としてる。

大学から出てきた一台の車は私の横を急ブレーキをかけて止まった。

何時もなら、すぐに気がつく姿のはずなのに、今日は幻を見てるような気分で私を呼んだ声の主を見つめてる。

なんで・・・?

私とはしばらく会わなかったんじゃないの?

いかにも私を待っていたという雰囲気で、高級スーツを着こなした道明寺が目の前にいる。

どうして?

声にならない言葉を唇が勝手に呟いていた。

拍手コメント返礼

Gods & Death 様

司君何しに来たんでしょう?

つくしのことが心配になったということなんでしょうけど。

教理を置く宣言は自分から破棄~。

司君を苦しめることはしませんから~。

りん様

もっと司君にはカッコよく♪

今回の司君は一味違う。

成長したなという態度でつくしちゃんを救ってほしい。

いつもいつも嫉妬心丸出しじゃつまんないですものね。

・・・・と、考えています。

『ずっと続けてほしいから。』

このコメントに泣けます(/_;)

多大な応援ありがとうございます。

私は物語を考えながら現実逃避中です。(*^_^*)

ストレス解消の場になるんですよね。