恋の駆け引きは密室で 30
長い間を挟んで再開です。
とはいうものの・・・
どう展開させるつもりだったんだっけ?
私の頭の中はチョコレート並みに溶けちゃってる気がします。
*深い森を抜けた湖畔の見える丘に建つ館。
屋敷というよりは中世のお城。
その中庭に降りたヘリ。
空から見えた森の先に壮大に広がる牧草地にポツポツと見えたのは牛の影。
歩いて逃げ出せるところじゃない。
茶色い屋根の広がるそのお城以外には建物の影は見えなかった。
完全に外界との繋がりを避ける豪華な牢獄。
重厚な扉を開いた先には欧米の顔立ちの使用人が数名。
私の理解できない外国語が飛びかう。
「イタリア語みたいだ」
「花沢類、分るの?」
「いや、無理」
フランス語はペラペラだからイタリア語もペラペラだとは限らないよね。
でも花沢類ならこの数日理解できるんじゃないのだろかと淡い期待をしてしまってる。
強引に連れてこられたにしては丁寧過ぎる出迎え。
お客をもてなす接待。
ここに居れば不自由はさせませんと言われてる気がする。
通された部屋も落ち着きのあるモダンなつくり。
花沢類の部屋とは隣り同士の部屋。
クルーザーの中で花沢類と一緒に過ごした部屋の方が気分的には落ち着く気がした。
本当にここに無理やり連れてこられたわけじゃなきゃ楽しくてしょうがないと思う。
「牧野、食事だって」
ノックの後に開く扉。
食事って言葉に反応するようにグルッとお腹が音をたてた。
こんな時でも私の身体は基本的欲求に忠実過ぎて困る。
花沢類の表情からは緊張が取れて穏やかな笑みを浮かべて私を見つめてた。
ダイニングキッチンに置かれたテーブル。
二人で食べるには大きすぎるチーク調の長いテーブル。
道明寺邸でも見慣れてるから別に驚かなくなった。
正式なディナーの様式で並ぶ食器。
普段着の私が席に着くには似合わない。
花沢類の場合は普段着からブランドだもの私よりはしっくりとくる。
目の前に運ばれてくる料理はどう考えても私たちをもてなしてるようにしか思えない。
このまま長くここにいたら太る気がしてきた。
規則正しく響く振り子時計の音。
黙々と料理を運ぶ給仕。
この人たちは私たちが無理やりに連れてこられたことを知ってるのだろうか?
言葉が通じないんじゃ何も聞き出すことも出来やしない。
「せめて連れてこられた場所が分ればな・・・」
「分ると思うよ」
小さく呟いた独り言はしっかり花沢類の耳に届いた様でテーブルの上から慌てて視線を花沢類に向けた。
「花沢類!分ってるってホント?」
もう食事どころじゃない。
それならここから逃げ出そうよ。
「俺が分ってるわけじゃないよ」
え・・・?
膨らみかけた希望が抜け落ちる。
それはまるで風船から空気が抜け落ちてしぼんで行くようだ。
分ると思うって期待させる言葉を言った花沢類が恨めしい。
カタンと椅子に落ちるように座り込んだ私に花沢類が優しく微笑む。
落胆してもそんな笑みを向けられるとホッとしてしまう自分がいる。
ごめんという様に笑顔を花沢類が私に向けて言葉を続けた。
「たぶんクルーザーから強引にここに連れてこられたってことはあのクルーザーの位置は司たちもわかってたってことだ。先手を打ってここに監禁場所を移しただけだって思うよ」
「この場所はヘリで移動できる距離だってことを考えると俺達が連れてこられた場所を司たちが割り出すのはそう難しい事じゃない」
確かに花沢類の言葉は説得力がある。
そう考えるとあと少しの辛抱で道明寺が私の前に現れる気がしてきた。
でもさ・・・
また先手を打って私たちの監禁場所を変えるって行動を相手がとることも考えられるんじゃないのかな?
一抹の不安は残る。
「命の危険はなさそうだから、しばらくはおとなしく様子を見よう」
花沢類の言葉が終ると同時にダイニングの扉が開く。
コツコツと規則的に響く足音。
現れたのは私たちをクルーザーから連れ出した金髪の女性だった。
拍手コメント返礼
キャサリン 様
謎解きは俺からですよ~。
つくしちゃんにも相手の姿が迫ってくる予定。
類君のナイトの姿をぜひ司が登場する前に見せたい!
なんてこと考えちゃってます。
みえこ 様
救出は屋敷を壊す勢いで司が飛び込んできそうな勢いになるんじゃないかと思うのです。(笑)
Gods & Death 様
いいな~旦那様と一緒にオリンピック。
わが家はオリンピックを楽しんでるのは私だけ。
娘なんて全く付き合ってくれません。
あんまり長引くと類君の方が辛くなりそうですよね。
案外楽しんでるのかな?
かよぴよ様
野球といえば、こちらはキャンプ到来。
ソフトバンクと巨人のキャンプでにぎわってますよ。
うちの姫は野球より出店が楽しみでまさに花より団子。
週末の部活の練習は去年はキャンプをしてる野球場の裏でやってました。
飛んできた練習ボールを拾ってきたことあったな。
あのボールどこに行ったんだろう。
失恋チョコ今日ですね。
場面を脳内変換して妄想を膨らませて物語の肥やしにさせてもらってます。
ゆきこ様
ヘリの飛行距離は300キロから500キロ♪
その半径で必死に場所を特定してるのはあきら君のお仕事でしょうか?
イタリアも確かにあきら君が一番似合いそう♪
そうなんですよ、司は残された血のりがフェイクだとは知りませんもんね。
心配で落着けない。
誰も不機嫌な司に近付けないかもしれな・・・(^_^;)