迷うひつじを惑わすオオカミ 14

西田さんあなたの手腕につくしの運命はかかってますよ~。

つくしちゃんが開ける扉は右左どっち!

右だッ!

・・・って、右は司か楓どっちなのよ~。

『注意事項の説明をしますので別室に異動します」

秘書室の手前でガチャlリとドアが開く

前に行こうとする身体は途中で別な方向に引き寄せられて連れ込まれた。

叫びそうになった声は直ぐに手の平で塞がれる。

会社で拉致されるって・・・

こんなことが出来るのは一人しかいない。

「牧野さん」

「彼女には、ちょっと用事をお願いしました」

塚原さんの声を遮る様に西田さんの声が聞こえた。

西田さんも共犯?

「テッ」

下に向けた視線の先に見えた長い指先に光沢のある爪。

見覚えのある人差し指にガブッと噛みつく。

私のかみついた前歯二本の痕がクッキリと刻まれた指を道明寺がブルブルとわざとらしく振った。

乱暴なやつだな」

乱暴なのはいきなり私を連れ込んだあんたでしょう!

私が凶暴なら歯形は上下の歯型が指に残ってるはずだ。

カタカタと部屋の中に響いていたキーを叩く音が止って広がる静粛。

少しの間の後にまたキーを叩く音が聞こえ出した。

道明寺に見せる反抗心をこれ以上社員の前見せられるわけがない。

道明寺の品格を落としかねない態度をとる位の気遣いは私もある。

それに顔見知りの秘書さんがクスッと小さく苦笑するのが見えた。

これ以上身構えたらますます笑われそうだ。

え?

おっーーーーッ。

スーツを整えるように襟を正そうとした私に遠慮なく長い腕が首に撒きついた。

行くはずだった別室の斜め向かいの部屋。

ズンズンと連れこまれた先にあるもう一つ奥に通じる部屋のドアを道明寺が開く。

何度か来たことがある道明寺ホールデングス代表執務室。

「しばらく誰も通すな」

開いたままのドアを何事もなかったように女性秘書さんが頭を下げて閉めた。

ようやく巻きついた腕から解放されて自由に息を吸うことが出来た。

「あのね、もう少し丁寧に扱ってくれない?」

「優しくしたら図に乗るだろう」

ふてぶてしい態度でニンマリと口角を上げて私を見下ろした。

そこにいるだけで一瞬にして空間を掌握する強烈なオーラ。

誰も逆らえないって雰囲気を作り出すのは相変らずずば抜けてる。

負けるか!

ググッと身体の筋肉が緊張するのが自分でもわかる。

「お前、お袋に会ったんだろ?」

いきなりなに?

なんで知ってるの?

「お前にはいつでも護衛を付けてるの忘れるなよな」

「それって・・・断ったよね」

大学でも、バイトでも目に付いた厳つい男性SP

目立つから嫌だって何度も道明寺に止めるように頼んだ。

「馴れろ」って一言で片づけられたけど最近周りに目立つ人見えなくなったから、道明寺も分ってくれたって安心してた。

「目立たねェやつをつけてるから心配するな」

目立たなければいいってわけじゃない。

根本から違う。

目立たないって誰かいたっけ?

お母様と遭遇する前私の側には背の高い観葉植物と自動販売機しかなかったぞ。

「もしかして木崎君!」

んなわけあるかって、凄い形相で道明寺に睨まれた。

「そいつにえらく気に入られてるみたいじゃねェか?」

「ちょっとした、知り合いだけだから」

警察の尋問というよりは凶悪犯の凶悪な脅迫。

私・・・

自分で墓穴掘った?

「会いたいと思っていた君に会えたから、とか言われて鼻の下伸ばしてんじゃねェよ」

「伸ばしてない!!!」

・・・て、どこまで筒抜けなのよ。

会社中の防犯カメラが私を見てるんじゃないよね?

こうなったら、道明寺が落ちつくまで言われるだけ言われちゃんだよね。

言い返してもすぐに自分の主張に持っいっちゃうに決まってる。

セミナー参加者の前で堂々とした道明寺にまた会いたい。

それでなくてもセミナーの参加で頭が痛いんだから・・・

あっ・・・

私がいなくなったことをあの二人はどう思う?

西田さんが用事を頼んだって誤魔化してたけどそう長い時間い無くなるわけにはいかないはず。

「そわそわするな」

道明寺に睨まれても落ち着けるわけない。

「どっちにする?」

道明寺がわけのわからないことを真顔で呟く。

「どっちってなに?」

「俺か、お袋か・・・」

道明寺とお母様?

それ・・・なに?

「俺とお袋どっちか選べ!」

しびれを切らした感情を丸出しに道明寺が私を責める。

「選ぶとしたら・・・それはヤッパリ道明寺だよ」

お母様を選ぶって何よ?

溺れてる二人を助けるのなら迷わなくお母様だけど。

道明寺なら自分で這い上がれるだろうからね。

「司、その言い方はフェアーじゃないはね」

いきなり後ろから聞こえた声。

機械仕掛けの様にギクシャクと身体の向きを変えた。

道明寺のお母様・・・道明寺楓。

「折角の秘書の体験だから、つくしさんに私か司のどちらかを選んでもらおうと提案してるの」

微笑みが氷の微笑に見えた。

秘書って・・・

どっちも選びたくない。

つーか、この展開なに!!!

ありえないつーの。

拍手コメント返礼

なる 様

拍手一番乗りありがとうございます。

二人を目の前に!

どっちを選んでも火種は残りそうで~

楽しい♪

西田さん、ため息ついてる場合じゃないです~よ。

まちゃこ 様

コメントの叫びに同感です。

花男見てるとそう思いますよね。

LINEでの 松本真央で盛り上がれる私達って、好きだな~(笑)

監察医のドラマでまったく関係ないのにな~。

みわちゃん 様

司君とられる前に自分の懐に入れる作戦に出ましたが、楓さんもそこは読んでいるのよ~。

このバトルどちらに軍配が上がるのでしょうか?

やなぎ様

どうせならりょうほうやっちゃえ!

好きです、やけくその展開(笑)

つくしちゃんやけくそになら泣きゃいいですけどね。

goemon 様

そうそう、なにを言っても司はつくしに弱い。

無難な選択は未来のお姑様。

司が素直に引き下がるとは思えないですけどね。

Gods & Death 様

日中の暑さは真夏並みですよね。

まだ梅雨前だと言うのに、そろそろでも天気が崩れそうですけどね。

今回は、楓さんのキャラを崩して書いちゃってます。

本来なら、黙って客観的に観察してそうですものね。

イメージがこのまま崩壊したらどうしましょう?(@_@;)

かよぴよ 様

何も説明ないままに「俺とお袋どっちをとる」って聞かれたらねェ~

つくしちゃんも「道明寺」って返事しちゃうよ。

でも・・・

どちらも道明寺ですけどつくしちゃん。

そんなツッコミはいらない?

miho 様

おもしろいの感想がうれしいです。

まだ書くぞ~。

どちらを選らんでも楽しそうですか・・・

え?

どちらも見たい?

実は私もです。

絵梨様

究極の選択。

まさにその通り。

どちらを選んでも火種は残りそうです・・・。

楓さんの秘書、意外とスムーズにイケそうな気も・・・

つくしは見学ツアーだけのはずなのに本気で秘書として仕事仕込まれたりして・・・

黒服の集団の中につくしちゃん。

確かに場違いだなぁ。(笑)