一秒ごとのLove for You 33(完)

「かわいいよ」

柔らかい砂に足音を残すのを楽しでいたつくしが何かを見つけて座り込む。

小さな親指大のヤドカリが必死で逃げるのを邪魔する様につくしが手の平で柵を作ってる。

振り返って俺に見せる極上の微笑。

太陽みたいな温かくなるこいつの笑顔は久し振りだ。

結婚して・・・

仕事して・・・

一緒に住んで・・・

お前が必要以上に無理してるの気がついてたんだ。

その上に俺のとばっちりで命狙われて・・・

休みを入れろと自分の我儘を押し通す様に見せて、西田に呆れられて・・・。

それでも道明寺の重圧から一時でもお前を解放させてやりたくて・・・。

半ば強引に日本から連れ出した。

あそこで松岡公平まででてくるのは想定外だったけどな。

おかげでつくしに自分が狙われてるとは気がつかれないままに今まで過ごせたのは幸いだった。

少しは感謝してるから光栄に思えよ。

松岡公平。だが二度とつくしの近くに寄るなよな。

「ほら、見てったら」

貝を背中に背負ったカニの一種の甲殻類を見てどこがおもしろいのか俺には分からない。

ヤドカリを見てこんなに楽しめるお前を見る方がおもしろいのは分る。

「それじゃ、道明寺のことは私が守る」

潤んだ瞳で俺をみつめてた数時間前のあいつ。

何処にもいないぞ。

つくしの言葉が頭の中で繰り返し聞こえて今も俺を幸せな気持ちにさせる。

自然の中で本当の自分を無邪気にさらけ出すお前が一番可愛って思う。

俺の前では無理すンなよ。

小さく口の中で呟く声。

今のお前にはそんな俺の気遣いは必要ないかもな。

そして・・・

俺は・・・

これ以上にないくらいに目を細めて、優しくお前に笑いかけてるんだと思う。

コテージを抜け出して歩く海辺の小さな町。

石畳に舗装された歩道は日本とは違う景色を見せる。

聞こえてくる言葉はなじみの薄い外国語。

俺にも聞き取れない言葉はある。

だから、何言ってるのみたいな表情で俺を見るな。

「今、俺の耳にはお前の声しか聞こえない」

腰を抱いている腕をもっと密着させる様に力をいれた。

「道明寺がしゃべれる言葉って英語とフランス語だっけ?」

「お前ワザと忘れてんじゃねえだろうな?」

「ん?」

「日本語が抜けてるぞ」

「道明寺は日本語が一番苦手だと思ってたけどね。言い間違い多いしね」

悪戯っぽく俺を見あげた瞳の中に笑ってる俺が映り込む。

「やっぱり、わざとか・・・」

フッとゆるんだ唇をそのままつくしの唇に落とす。

俺のキスに答えるようにわずかに形を変えたつくしの唇。

軽めのキスは唇が離れたあとでも名残惜しい余韻を残す。

小さな店構えのレストラン。

入ろうと俺の手を引っ張るつくし。

案内されたのは二人掛けの丸いテーブル。

言葉が通じない相手に別な席の料理を指で示したり、メニューの文字を身振り手振りで聞くつくし。

それが通じるから何とも面白い。

黙って見てる俺にしびれを切らしたようにつくしが膨らんだ。

「何か、注文してよ」

「俺はお前の頼んだやつでいい」

大体頼みすぎだろう。

俺が数えてるだけで5つの大皿は頼んでる。

くえるのか?

こいつならぺろりと平らげるだろうけどな。

食事の後は露天やテントの並ぶ市場。

ガラクタみたいな民芸品に野菜や果物に魚が並ぶ。

夕食は自分が作るとやたら張り切ってどれがいいかと本気で悩んだ顔で両手で持ってるのはジャガイモ。

ここでジャガ肉でも作ってくれるつもりとか?

ジャガ肉が浮かぶ俺もどれだけつくしに感化されてるのか。

笑いが止まらない。

「あっ、これいいかも」

ホント、どうでもいいようなガラクタを欲しがるやつ。

俺が宝石をプレゼントしても迷惑そうな表情するのにこんなもんに目を輝かしてる。

「買うのか?」

「お土産にね」

「ほら、職場のみんなに、それに公平にもね」

無邪気な笑顔で他の男の名前を呼ぶんじゃねェよ。

「ちょっと、まだ見てたのに」

振り返って店先を名残惜しそうに見つめてるつくしを引きずって歩く。

「帰るぞ」

「まだ、見たいとこあるのに」

命を狙ってる緊張感が抜け落ちたらすっかり警戒心もなくなってる。

安心し過ぎだぞ。

「土産なんて買う必要ねェよ」

人通りがところで、諦めたつくしが俺と肩を並べた歩きだす。

握っていた腕を振り切る様にしてつくしが俺の前の飛び出した。

「ねぇ・・・?まだ嫉妬してる?」

「悪いか」

「そんな必要ないのに」

俺の襟を掴むように腕が動いて、つま先立ちのつくし。

「信じろ」

そう動いた唇が俺の唇に近付く。

「それなら俺を信じさせろ」

そう言いかけたセリフをキスで塞がれた。

帰国後のお話は番外編でということで、公平君ファンにはお待ちいただきたいと思ってます。

これでこのお話は終わりです。

お付き合いありがとうございました。

拍手コメント返礼

さわね 様

お付き合いありがとうございました。

四六時中イチャイチな感じで終わったような・・・

この後司君に火がつかなきゃいいですけどね。

番外編はそれじゃない~

みわちゃん様

ここまで独り占めしてるんだからねぇ。

嫉妬する必要なんてないのになぁ~

番外編はどうなるか!?

嵐になったら番外編じゃなくなるからそれが怖かったりして・・・・

メガネちゃん 様

今回は司にやさしすぎたような気がします。

司の不器用な愛し方。

それでも攻めてるところはしっかり攻めてるんですよね。

この後の二人はどうなる?

余韻を残しながらENDとさせていただきました。

Gods & Death 様

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現実と比べたらため息が・・・

夫婦も長くなるとなぁ(^_^;)

結婚しても恋愛していたいって言い切るタイプの女性にはちょっとなれません。

私は旦那より子供だなぁ。(笑)

私も今日も二次を書いて現実逃避~。