迷うひつじを惑わすオオカミ 32

代表が・・・

牧野つくしに覆いかぶさった。

私の横で木崎君がわずかに目を伏せる。

そうよね。

人のラブシーンなんて見て楽しめるものじゃない。

あれって・・・キス?

ホラ。

この部屋いるみんなさん直視できずに視線が彷徨っちゃってます。

なのに・・・

どうして・・・

私は視線を外せずに固まっちゃってるんだろう。

代表の両脇から出ている牧野つくしの両手。

バタバタと宙を煽いでる。

それはまるで、蜘蛛の巣から必死で逃げようともがいてる蝶。

蝶じゃなくあれは蛾よ!

息苦しさにバタついてるのはキスじゃなく人工呼吸かも。

代表に別れを告げられた牧野つくし。

ショックからヒステリーを起こして過呼吸で息が出来なくなった。

やさしい代表がそんな牧野つくしを見過ごせるわけがない。

なんて優しいのかしら。

クールに代表が見せる良心にキュンと来ちゃう。

もう~

恋人同士の甘いキスなら仕事場のそれも部下のいる前でしちゃうはずないもの。

私、もう少しのところでカン違いしちゃうところでした。

私もお手伝いします。

助けるのが牧野つくしってところは気に入らないけど代表がこれ以上悪者になるのは嫌ですから。

「服を緩めて、寝かせた方がいいです。

あっ何処かに紙袋ないですか?」

駆け寄ろうとした私の腕を木崎君が掴んで離さない。

何するの!

もしかして木崎君も私のこと思っちゃってる?

ごめんここはどうしても代表のお手伝いをしないといけないのよ。

腕を離して~

おねだりする熱い瞳を木崎君に向けて見た。

真剣な眼差し・・・

真実、困っちゃう。

でも代表を思う私の思いは変えられないわ。

あなたもイケてるけど所詮道明寺HD代表の敵ではないもの。

許してね。

腰・・・イテッ

無理な体勢で牧野に覆いかぶさってキスをした。

俺達の関係を知らせるにはこれが一番手っ取り早いと思ったからだ。

楽な姿勢を探しながら折れ曲がった牧野の身体を抱き寄せながら身体を起こす。

立ち上がった身体はクタッと倒れ込むように俺の身体に柔らか身体を押しつける。

まずい・・・

俺の本能が素直に反応してる。

これ以上密着してたらやべっ。

まだこれからだぞ!

別なことに集中!

「何、考えてるのよ!」

突然復活した牧野が腕の中から逃げ出そうと両腕を俺の胸に突っ張る。

「おい、静かにしろ」

爪を出したネコに引っ掻かれそうな勢いの牧野は耳まで真っ赤に熟してる。

もしかして・・・

バレタカ?

牧野が俺の下半身から身を引こうと必死なのが分かった。

なんか腹立つ。

「お前のせいだから後で責任取れ」

これ以上は開かないと見開かれた瞳。

「あああ・・・っ」

唇の動きは言葉にならずに吃逆してる。

牧野が俺を責めてるのは重々承知。

アイツに見せつける為だ我慢しろ。

そんな思いでもう一度唇を塞ぐ。

唇の形を確かめるように舐める舌先。

吸い付くように重なった唇は俺のために造られてるようだといつも思う。

ワナワナと震える和らかい唇から漏れた吐息。

僅かに開いた唇から滑り込ませた舌先が牧野と舌先と絡みつく。

嫌がってるようには思えない牧野の反応が俺の身体を熱くさせる。

これ以上続けたら本気でやばいかも。

これ以上ダメだとブレーキをかけたいのにかけたくない想いがかすかに残る。

牧野に拗ねられて困るの俺だよな?

「服を緩めて、寝かせた方がいいです」

寝かせるって今聞こえなかったか?

それも服を緩めて?

さすがに俺の指も牧野の服の中まではいまだ浸食させる気はない。

それこそ止れなくなる。

唇を重ねたままチラリと声の主に視線を向ける。

「あっ何処かに紙袋ないですか?」

紙袋?

紙袋をどうする気だ?

俺達に近寄ろうとした塚原を止める木崎が見えた。

「「離して」」

俺の腕の中の牧野と木崎に掴まれた塚原が同時に声を上げた。

「牧野さんの体調が悪いの分からないの!」

へ?

俺の腕の力が緩んだ拍子に牧野は西田のデスクの上に身体を支えるように両腕を付く。

両肩で息をする牧野は確かに調子が悪いように見えなくもない。

って!

この状況で牧野の体調が悪いってカン違いする様なやつ一人もいねェぞ!

「どこを、どう見たら牧野の体調が悪いと思うんだ!」

そう思ってるの俺だけじゃないはず。

「もう治った!」

牧野・・・

お前何言ってんだ!

今度は俺の方が驚いてしまってる。

「あのな、この状況で俺がお前にキスしたのか、みんな分かってるだろうが!

何のために俺様がこんなことしたかわってるのか!お前の為だろうが」

俺の方が酸素不足に陥りそうだ。

「いいか、こいつは俺が自分に興味が有ると思ってるんだぞ」

ジロリと睨み付けた視線にビクッと反応を見せたのは塚原じゃなく木崎。

塚原を握っていた木崎の腕がゆるりと肩から力が抜けるのが分かった。

「放すな」

俺の声にもう一度木崎が腕に力を入れ直すのが見える。

「いいか、俺はこいつと別れるつもりもない。お前の事なんて120%興味ねェから消えろ」

静まり返った秘書課。

室内の空調の流れのなかで俺の声だけが低音で広がる。

木崎に倒れ込む塚原が見えたのはそれからすぐのことだった。

拍手コメント返礼

メガネちゃん様

過呼吸を思いつくあたり、どうにかこうにか都合を自分いに合わせようしちゃってますよね。

司の言葉をどう都合よく解釈しちゃうのかしらと無謀にも考え込んでる私がいます。

そろそろ終わろう・・・(^_^;)

木崎君の正体!

何処かの大金持ちの御曹司?

はたまた葉っぱコンビに続くSP候補

などありますが正解はなんでしょ~♪

もうちょっとお待ちくださいね。

なる  様

ある意味一番頑張ってるのは塚原さんかも知れないですよね。

話を面白くしてくれてるしなぁ。

某所の御友達も昨日5人組鑑賞したそうです。

DVDになることに期待!

みわちゃん 様

ここまでくると何も言えませんよね。

呆れというより諦めるに近い心境。

昔『白鳥玲子でごさいます」ってお金持ちでプライド高くて思い込みが激しいお嬢様のお話を思い出さいました。

あれって確か好きな男の子追いかけていたような・・・

最後どうなったんだけなぁ・・・(^_^;)

倒れた塚原さんは本当に倒れ込んだのか!

気になりますよね。

ずんこ様

えーーーーッ

本当に塚原さんみたいな方がお知り合いに!?

大変そう・・・(^_^;)

そうか、そちらはもう夏休み終わりなんですね。

今日は登校日で今我が家で一人を楽しんでます。

この隙に掃除じゃなくPCの前にいる私。

夏休みが終わるまであともう少しだ!

Gods & Death 様

今年は大雨の被害がすごくて心配ですよね。

お孫さん帰って寂しくなっちゃいましたね。

遊びに連れて行くのも大変ですよね。

小さいうちは自宅でゴムプールで良く遊ばせていたな。

プールと大きさ変わらないイルカの浮きを浮かべて子供が入る場所がなくなるような水遊びをさせてましたね。

あのゴムプールどこに片づけたかなぁ~。

今度整理しなきゃ。

そうなですよね。

加川さんが最強キャラと思ってたんですけどね。

上を行きますよね?

まちゃこ様

ここまで来ると鉄人?

いの 様

塚原さんの才能どこかで活かせる場所あるでしょうか?

考え付かない・・・(^_^;)

あはは、サイドストーリー

西田さん日記のリクはいただいちゃってるんですよね。

最近ご無沙汰~。

瑛里 様

これで、伝わらなかったら・・・

多くの方がそんな心配をしてくださってます。

私も心配(笑)

>「〜120%興味ねェから消えろ」って司にしてはまだ抑えて言ってますよね! 消えろに、目障りだを付け加えても良かったんじゃないかなって思いました。

実はそうなんですよね。

もうカン違い出来ないほどやらなきゃ!

と思いつつ余裕を持たせちゃってます。

まだこれならカン違いしちゃうかものドキドキ感♪

どうなるかは次回ですよ~。

やなぎ 様

男はみんな私に夢中になるの持論展開中ですからね。

司君のセリフで落ち込んでもらいたいものです。

三条ゆか様

初コメありがとうございます。

私もつくしちゃんが幸せなのが一番です。

くまさん様

カン違い具合を楽しんでもらえて嬉しいです。

応援のコメントもありがとうございます。

mizuta 様

司君人目も気にせず出来るタイプなんですよね。

外国人並みの熱い抱擁。

それも見てるこっちがポッとなるような映画のワンシーンでやってくれてるはず。

秘書課のみなさんはあんなキスしてもらいたいと見惚れてる。

そして西田さんの視線で我に返って仕事するフリ~

そんな場面を書くには塚原さんが強力過ぎでした。(^_^;)

え?

気絶から復活したらリセットされて忘れてる?

あはは、それ面白そう♪