雪の華

今回の曲で綴る物語のリクエストは mizuta 様の雪の華

この歌をバックに花男の画像スライドショーを作っていて物語のイメージを考えることあるんです。

類君のお話のときは平井堅の『瞳を閉じて』ですね。

以前はキリ番を踏まれた方にスライドのDVDをプレゼントさせていただいたので知ってる方もいらっしゃるはず。

この曲をリク頂いた時うれしかったです。

誰かのためになにかを  したいと思えるのが  愛ということを知った

もうこの詞なんてまさに司だなぁって聞いちゃってます。

まずい・・・遅刻だ。

腕時計で時間を確かめながら駅から待ち合わせ場所に走った。

右足先を上下させながらコツコツと靴音を鳴らして立つ道明寺。

時々私を探す様に視線を動かす横顔が眉間に眉を寄せながら腕時計を眺める。

イラついてるって分るから私も必死で走る。

「ごめん」

言い終る前に「遅せぇぞ」の怒号が響く。

「お前は俺様をここでどれだけ待たせれば気が済むんだ」

道明寺に初めて誘われたデートの待ち合わせ場所、恵比寿ガーデンプレイス 時計広場。

待ち合わせの時間はあの時の時間より遅い夕方だけど。

初めての待ち合わせの事、道明寺は覚えてるのだろうか。

道明寺のことがちょっぴり怖くて、デートの誘いも冗談みたいで、自分の気持ちが分からなくて・・・

雨の中ずっと待っていた道明寺はずぶ濡れで・・・

英徳暴君が私を待ってる事が信じられなくて立ち尽くしてみていた自分。

あの時と変わったのは私は道明寺が好きだってことを自覚してる事。

「電車が混んでたの、でもそんなに遅れてないでしょう」

時計の針は待ち合わせより15分の遅れを示す。

「だから、俺が迎えに行くって言ってるだろうがぁ」

「道の通行に邪魔になるようなどデカい車で乗り付けられたら近所迷惑なの」

「たくッ、俺に刃向うのお前くらいだよ」

プイとソッポを向いた道明寺が独り大股で歩く。

「どれだけ俺が心配したと思ってるんだ」

独り言にしては大きな声。

付いてこない私に気が付いたように立ち止まった道明寺が振り向いた。

「世話焼かせるな」

引き戻してきた道明寺が私の手首を掴む。

強引に引っ張られていた私も歩くうちにゆっくりと小さく歩幅を変える道明寺の肩と私の肩が並んだ。

そのまま道明寺の手が移動して絡んだ指先。

「事故に遭ったんじゃないかとか心配したんだからな」

すこし拗ねた横顔はかすかに赤い。

だったらもっと優しい言葉をかけてくれてもいいのに。

でもこれが道明寺なのかな?

そんな些細な不満は直ぐにくすぐったい思いにかき消されてしまう。

 のびた二人の陰を舗道に映す夕焼け。

その影が人に踏まれるのがちょっぴり嫌で人込みを避けるようにして歩いてる。

「お前、真直ぐ歩けねェぇのかよ」

「歩けない訳じゃないけど」

立ち止まったままの視線は路上の影を見つめたままでまともに道明寺の顔が見れなくなってる。

「あっ・・・」

二人の陰に重なる様にして通りすぎた他人の影。

それさえもなんだか寂しいって思ってしまう。

影にさえ邪魔してほしくないって思ってしまう我儘に笑っちゃうよね。

こんなこと考えてるって道明寺にバレたくない。

「何見てんだ」

私の視線を追う様に道明寺の視線が足元を見つめる。

「なんもねぇだろう。行くぞ」

道明寺の腕が私の肩に回されて二人の距離を詰める。

「寒くないか?」

少し冷たくなった風から私を守る様に道明寺の温もりが身体を包み込む。

冬の寒さも悪くないね。

道明寺と私の距離がこんなに近くて、温かくて、心地よくて幸せな気分にしてくれるもの。

私たち以外のカップルも肩を寄せ合って歩いてるから、まわりの目もそんなに気にならない。

「俺、冬って嫌いだったんだ、けど、今年から好きになった。

お前が俺の隣りにいればだけど」

空を見上げながら呟いた道明寺が視線を私に移して照れくさそうに笑った。

愛してるって直に言われるよりジンときてる。

心臓がうるさいくらいに胸を打つ。

どんな言葉を返せばいいのかわかんなくなってるよ。

ポツンと点で冷たく感じた手のひら。

「雪?」

「積もりそうだな」

道明寺が手の平を上に向けて白い雪を受け止めながら呟いた。

「走るぞ、滑るなよ」

少し横暴な態度でそう言いながら腰に腕を回して私を支えてくれる。

来年も、再来年も永遠に冬が好きだって道明寺に思ってもらいたい。

きっといつまでも私は道明寺に寄り添って歩いてるって自信ならあるから。

道明寺と離れない様に道明寺の背中に腕を回した。

拍手コメント返礼

なる様

この話を書くときにイメージしたのは花男リターンズの最終回の最後のシーン。

あの季節も冬ででも雪は降ってなかったと思いつつ雪降らせちゃおうと思い妄想して書き上げました。

花男DVDタイムはいかかでしたか?

私もまた見たくなったなぁ。

mizuta 様

書き上げるまでドキドキで~

何気ない日常でドラマを一つ作るって、表現を試されてる気がします。

文章ひとつでクルリと雰囲気が変わっちゃいますから。

そこで想像力を助けてくれるのが曲のイメージと歌詞。

>二人の愛が溢れんばかりで。 読んでいて、ジーンとして、

>鼻の奥がツーーーーーーーーンてww 涙が出そうになりました

このコメを頂けただけで書いた甲斐がありました。

しっかり曲のイメージが出来上がってたので書きやすいお話だった気がします。

曲で綴るお話は自分への挑戦みたいな感じで、想像力を高めるのに役立ってます。

まだまだ、リクがたまっていて終わりが見えませんが挑戦は続けていきたいと思ってます。