PHANTOM 13

つくしちゃんただいま息を殺して隠れてる最中だと思うのですが・・・

逃げる必要なんてないような気もしますがそこはご愛嬌。

題名がPHANTOM ですから戦闘機なみの破壊力で猪突猛進!

壊れるのはどっちかな・・・(;^ω^)。

「どうかしましたか?」

鼻先がぶつかりそうになる一歩手前で急ブレーキをかけた。

「千葉さん・・・」

つぶやく声も息を潜める。

道明寺専属たまには私の護衛も務めてくれる道明寺SP。

相棒の相葉さんの姿は見えないが内緒で葉っぱコンビなんて呼んでる気心の知れた大学のころからの長い付き合いだ。

千葉さんは今日は道明寺についてるはずで・・・

まさかすでに先回り!

千葉さんの後ろには誰もいないことを確かめてほっとした。

そうよ!

煌びやかさをまき散らしながら私を呼ぶ声も荒くて周りの視線を集めるのをものともせず追っかけていたんだから、私の前にいるはずはない。

背後から忍び寄る気配に慌ててエレベーターに飛び乗って1階のボタンを押す。

もちろん千葉さんも引っ張り込む。

「俺、最上階に戻らないといけないんですけど・・・」

そう言う千葉さんの両方の手にはコーヒーの缶が1本づづしっかりと握られてる。

「ここまで、コーヒーを買いに来たんですか?」

「この階にしか置いてない缶を先輩が飲みたいってわがまま言うんですよ」

エレベーターの中で和む何気ない会話。

それなのに私の心臓はバクバクと脈を打って静まる気配が見えない。

「もうすぐおひるじゃないですか?

今日は代表とじゃないんですか?」

千葉さんの私に注ぐ瞳は平日の恒例行事ですよね的な感情を浮かべてる。

「千葉さんお願いがあるの」

道明寺を引き止めて!なんて千葉さんがしり込みしそうなことは言わない。

「この、封筒預かってもらえるかな?

私が返して言うまで、数日でいいから」

「え?なにするんですかぁ!」

千葉さんの返事を待つ時間ももどかしくて、ちょっと強引にスーツの内ポケットに封筒を押し込んだ。

くすぐったそうに上半身をもだえる千葉さんには自分が痴女なんじゃないかと勘違いしそうだ。

「絶対道明寺には渡さないでよ」

念を押したところでエレベーターは1階に到着。

到着音がチンとなって左右にエレベーターの扉が開く。

「あっ・・・」

千葉さんの頬が強張って緊張な面持ちを浮かべてる。

扉のほうから突き刺すような威圧感は背中に十分すぎるほどのビビリと電流を流されたような刺激を感じた。

振り返らなくてもわかるその正体。

エレベーターを追いかけてきたのは明白。

グイと肩をつかまれて引きずりだされた。

「手間かけさせんじゃねぇよ」

「別に追いかけてこなくても・・・」

「てめぇが逃げるからだろうが」

「道明寺が追いかけてくるからでしょう」

睨み合っていた視線がわずかに離れて私の後ろの千葉に動く。

「千葉、お前にしちゃ気が利くじゃねぇか。よくこいつをつかまえてくれた」

ここはそのまま千葉さんが私を捕まえたと思ってくれてたほうが都合がいいかも。

「エレベーターで偶然会っちゃったら、代表のもとに連れていきますって言うんだもん」

それなら1階じゃなく最上階にエレベーターが向かわなきゃいけないというズレには今は道明寺に気が付いてほしくない。

千葉さんが私たちのそばから離れてくれれば玲子さんがとってくれたチケットは当日まで内緒にしておけるはずだ。

完璧だと気を抜いた私の胸元。

スーツの襟元から背中越しに伸びてきたしなやかに差し込んでくる腕。

「ちょっとっ・・・何して・・・る?」

ごそごそと服の上から胸元に触れる指先は慣れた感触で、赤面するには十分。

「出せ」

「出せ?」

脱げじゃなかっただけまし?

って、安心してる場合じゃない。

ここ!道明寺本社ビルエントランス中央。

社員だけじゃなくどこの誰が出入りしてるかもわかったものじゃない。

「ちょっと、ヤダッくすぐったい」

鼻から抜けるような声に思わず私も焦る。

「ねぇ・・・っ」

つぶやく道明寺と顔を上に向けた私の視線がぶつかった。

どうしてもってないと訝しる嫌な目つき。

道明寺は相変わらず私の後ろにいる状態。

私の左足に自分の左足を絡め、私の動きは抑制されたまま。

これで私の右脇からにねじ込まれた左手を出してねじるように絞められたらプロレスの絞め技コブラツイストになってしまう。

いや、見た目は代表がエントランスで私にプロレス技をかけてると勘違いされそうだよ。

身体を必死に動かしても道明寺は私から離れそうもない。

「どっか落としたかな・・・」

我ながらまずい言い訳。

「お前もあんな大事なもの落とすほど、そこまで間抜けじゃねぇだろう」

ふわっとした開放感。

私から離れた道明寺は乱れる息を楽にするようにネクタイを緩めて息をつく。

「大事なものって・・・知ってたの?」

どうしてわかった?

まさか道明寺もその舞台が私たちの大事な思い出で一緒に見るつもりだったとか?

私を驚かすつもりで道明寺もチケット準備してたとか?

でもそれならここまで追いかける必要はないような気がするし、私も逃げる必要なんてないじゃない。

「道明寺・・・」

「とに、俺に隠し事すんじゃねぇって何度言わせるつもりだ」

道明寺の手のひらが私の後ろ髪をすくように動いて胸元に引き寄せるように後頭部を包み込まれた。

ここエントランスだから・・・

目立つ・・・