PHANTOM 15

司の勘違いも訂正されたところで、ここからは楽しく仲良くいちゃこらと~♪

そういかないのが我が家の司とつくしだということは御理解していただいてますよね?

ねっ!ね!ね!

と一応念を押してみました。(;^ω^)

信じられない。

道明寺が不機嫌な理由をどれだけ考えてたと思ってるのッ。

悩んだのが損した気分だ。

すごーく幸せな日々を送ってたって思ってたのに。

寝る時も道明寺の腕のなかで眠りについて、朝、目覚めたら道明寺の寝顔が私のそばにある。

もう離れて暮らさなくていいんだよ。

それが大切で、大事で、宝物で二人の時間が一緒に生活の中で流れてる感覚。

幸せだって満足してたのに。

「おい、なにすねてんだよ」

「あたりまえでしょ」

離婚を誤解してる時点で、警告レッドカードで退場でしょ。

それにさ勝手に誤解したのは道明寺なのに誤解させるような態度をとった私が悪いと責任転嫁。

そんな態度とってないつーの。

ついてくるな!の、オーラを背負ってる私なんてお構いなしに後ろから離れない道明寺。

私の不機嫌さなんて全く気にしてない態度の道明寺。

ほら!また笑った!

思いだし笑いなんてするな!

この状況で笑える道明寺の神経が分からない。

「そうだよな。お前が俺と別れるなんて考えるわけねぇんだよ」

きやすく肩に置いてきて腕を無造作に払いのける。

簡単に肩を抱かせてたまるもんですか。

悪びれることもなく今度は腰って!

気やすく触るなッ!

そうじゃなくても私のそばに親鳥のあとを追いかけるひなの感じに寄ってくる道明寺はかなり目立つ。

ここで肩でも抱かれたらそれこそ示しつかないよ。

「仕事中」

ぴたりと足を止めた私を追い越して私の前で道明寺が遅れて足を止めた。

面と向かいあった顔はフッと不敵な笑みを浮かべて私を見下ろす。

「もう、昼休みの時間だ」

あっ・・・

そうだった・・・。

最近は昼休みは一緒に道明寺といることが多いからありふれた日常の時間。

だからって会社でべたべたしていいものじゃないと思う。

そこはしっかり切り離して置かないとねって・・・

今更無理か。

代表が結婚して変わった10か条とか、ひそかに社員内でささやかれ始めてるらしい。

代表の雰囲気が柔らかく変わったとかの噂は私の耳まですでに届いてる。

赤面もの。

鼻歌を歌って書類にサインする代表を見た。

エレベーターに走りこんだら開くのボタンを押していてくれたのは代表だった。

怒鳴る回数が一日平均ひとけた台に減少。

代表が素敵な微笑み浮かべてる近くには私がいるとか。

仕事では冷静な代表が唯一弱みを見せる相手出現!それが私・・・。

最上階でしか見ることができない代表が最近は社内あちらこちらに出没するから拝謁する機会が増えた。

代表を追いかけることはあっても代表が追いかけるのを見たことはなかったのに最近はやたら目撃できる。

これってまったく今日の私たちだよ。

あとは・・・

思いだすのが恥ずかしくなってきた。

「おいしいものでも食べればお前の機嫌なんてすぐ直るんじゃねぇの」

平和にそうつぶやくのんきな道明寺もこの10か条見たらのんきにできないんだからね。

「食べ物じゃつられない。

道明寺と結婚したおかげでおいしいものたくさん食べてるから食べ物じゃ機嫌はとれないんだから」

逆にラーメンとかファーストフードとか気楽に食べるほうが満腹になれそうな気がする。

「無駄に、抵抗すると料理されるのはお前で、料理するのは俺ってことになるぞ」

「道明寺って・・・料理作れたっけ?」

包丁を使う道明寺を今まで見た記憶ってないはず。

何食べさえてくれるの的に不思議に道明寺を見つめかえした。

沈黙は道明寺の美をしっかりと私に見せつけてくる。

整いすぎてる顔は綺麗すぎてバーツ一つ一つを切り離してみても美術的要素は高いって思う。

「俺が料理するのはお前って言ってんだよ」

ツンと鼻筋の通った綺麗な顔が私の真正面に鼻先が突き当たりそうな近距離で迫りながらそう難なく告げた。

キスしたくなるようなつややかな唇がこれ以上にアップにできないところまでアップされて思わず、目を力まかせにつぶる。

料理するってわたし?

それって・・・

目をつぶったことで体中の細胞が道明寺を意識し始めた。

視界の遮られた中で道明寺の身体が私の身体に近づいて壁際に追い込まれる気配は敏感に感じてる。

背中にひんやりとした壁の感触。

もう逃げ場ない。

スカートの上から腰のあたりに道明寺の手のひらの感触。

するいと太ももをなぞる指先がお尻の丸みに沿わせるように這い上がって甘く包み込む。

「ひゃっ」

「これだけじゃ済まなくなるぞ」

耳たぶに触れる唇にビクンとしたしびれが背筋を走り抜ける。

「わかった・・・言うとおり・・・にするから、そこまで・・・で・・やめ・・・てッ」

私の感じるところをすべて知り尽くしてる手管。

いいようにされてるのが腹立たしいけど抗えない自分にも腹立たしい。

「数時間だけの猶予だってわかってるよな?」

さらりと言いきる余裕ありすぎな落ち着いた口調。

道明寺のまなざしはなんの迷いもなくただ私だけを見つめていて熱がこもる。

口説きのオーラーが強すぎ。

まだここエントランスだから!

言ってること、やってること、雰囲気、全部が艶。

周りに見られてることは気にも留めない道明寺の神経にはついていけない。

とにかく早くこの場から離れることが一番の課題だ。

「ちょっと、事務所に戻っていいかな?」

それだけの言葉がやっと言えた。