PHANTOM 23
この場に椿さんが登場したらもっと楽しそうなんですけどね。
F3は司に呼ばれてもこの場は遠慮しそうだしな。
意外と楽しい食事会♪
穏やかに流れるという拍子抜けの展開になるとか・・・・?
それじゃ面白くないか・・・(;^ω^)
「何企んでる?」
緩やかな唇のラインは直ぐ様真一文字に唇を結ぶ。
きらりと光る眼光は実の息子に向けるには鋭すぎる。
慣れてっけど。
ヒヤッとしたあいつの表情は上目づかいに俺を見つめて固まった。
「ちょっ・・・と」
次の言葉を考え悩む表情はそのまま戸惑いを上乗せしたまま。
俺を責める色合いをにじませる大きく見開かれた瞳。
「なんだ?」
いつもより眼振してるのが、頼られてるように感じたのは一瞬。
「企んでるなんてあるわけないでしょう」
諭すような色づかいの声はおふくろに遠慮してるのが見え見え。
俺よりお前のほうが気が気じゃないんじゃねぇの?
言いたい声をにんまりとしたた唇の上にのせた。
「司は、来なくてもよかったのに」
手のひらにのせた湯呑を押し戴くようにお袋が口に運ぶ。
湯呑を傾けながら伏せた目元は一瞬にして表情を読み取ることを不可能にした。
「俺たちとのんきに食事をする時間なんてないんじゃないのか?」
「あら、息子夫婦と食事をとることもできないような時間の使い方をしてると思って?」
湯呑から慣れた唇は朗らかに微笑んだ。
その微笑みが曲者なんだろうがぁ!
「ここのお料理は本当においしいのよ」
箸を進めるようにお袋の視線はあいつに向けられたまま。
戸惑った箸使いで料理を一口分口の中に放り込むあいつ。
「おいしいっ」
蕩けそうな表情を浮かべたあいつの本気のおいしいって心の声。
目の前に苦手なお袋がいること忘れてるぞ。
「昼間っから、こいつにうまいもん食わせすぎると豚になるぞ。
ワンコインの定食でいつもなら満足だろうが」
「ワンコインて?」
おふくろにしては珍しい疑問符。
俺もつくしと知り合わなければ知らなかった別世界の価値観。
「あっ・・・お昼ご飯を食べるのに・・・」
説明するつくしを制して「500円でランチが食べれるんだよ」と説明した。
大きく目を見開いたおふくろを初めて見た気がした。
こんなことで優越感を覚えることができるなんだつくしの価値観全部披露するのも面白そうだ。
「一般的な世論を知るのは大事なことだから、
つくしさんが司のそばにいてくれるの必要なことなのでしょうね」
結婚する前からおふくろのつくしの評価はうなぎのぼり。
婚約を許すまでの妨害は夢じゃなかったのかって思う変わりよう。
おふくろの予想外のやさしい言葉とは対照的につくしの緊張感は限界が見えてきてる。
俺の膝に置かれたつくしの手のひらがギュッとスラックスの生地を掴んだまま。
皺ができるのを通り越して破けるんじゃないだろうな?
「おい、大丈夫か?」
「大丈夫・・・」
こくんとうなずくつくしは笑顔を必死に作る。
心配するな。
無理難題を押しつけるようだったら俺がいつでもお前を守る。
「そろそろつくしさんには私の代わりを務めてもらいたいと思ってるのだけど?」
食事を終えたおふくろが発した第一声。
何を言われたのかわからないきょとんとした表情をお袋から俺をじっと見つめてる。
何言われた?
そんな疑問を浮かべた表情。
俺も知るかよ。
会社人間のお袋がつくしに任せる仕事ってムリだろう。
こいつも弁護士の仕事を覚えることに必死な新米弁護士。
自分のことで精一杯の状況。
「こいつに、おふくろの真似できるとは思わないし、させるつもりもない」
ここで嫁いびりとか考えてねぇだろうな?
これ以上こいつが忙しくなれば俺との時間を割かなければいけないのは目に見えてる。
って、これは・・・
俺への嫌がらせ?
西田はどこまでおふくろに報告してる?
「あんまり苛めないでくださいと会長には言っておきましょ」
執務室でのしたり顔の西田が思い浮かんだ。
「だれも道明寺HDの仕事を変わってもらおうとは思ってないわ。
道明寺司の妻としての仕事がありますからね。
そろそろそれを覚えてもらいたいと思ってるだけですよ」
なんだ、そんなことか・・・
って思えるわけねぇだろう。
これ以上つくしを忙しくさせんじゃねぇよ。
「つくしさんが道明寺司の妻としての役目をしっかりと果たしてくれたら私はNYで仕事に専念できるはずですから助かるの」
助かるのなんてらしくねぇか弱さ。
おふくろが言うとしおらしさより恐怖を感じる。
「私で、できるのなら、ご期待に添えられるように努力します」
元気が復活した声が俺の横から上がった。
簡単にノセられんじゃねぇよ。
このっ!
単純バカの単細胞ッ!
睨みつける俺を全く見てないつくしがいた。