PHANTOM 24

えーと・・・

離婚届の勘違いからラブレターになって・・・

それからどうなった?

つくしちゃん司への恋文はどころじゃなくなりましたよね?

で・・・司君どうする?

和やかにランチは進んで・・・って・・・

ふてぶてし態度を崩さないままの道明寺。

それはまるで反抗期のガキ。

高校時代の道明寺を知ってれば反抗期のガキのほうが数十倍は可愛いかもしれないけどね。

英徳ではやりたい放題。

学校の先生もF4のすることは見て見ぬふり。

入学から卒業まで制服を着てるとこなんて見たことない。

警察沙汰を隠すために幾度となく奔走したって西田さんが言っていたもの。

「何企んでる」

なんてこと言うの!

一瞬で食欲が失せた。

親に言うべき言葉じゃない。

お母様の前でただえさえ緊張してるのに道明寺の見せるお母様への態度がさらに私のドキドキ感を刺激してくる。

こんな刺激は欲しくないって!

そんな道明寺をものともせず微笑みを浮かべながらさらりと受け流して動じないのはさすがだ。

相手にしてないって対応を道明寺にできるのはたぶんこの世でお母様だけかもしれない。

道明寺を相手にしてないから自然と会話は私とが主流になる。

道明寺との付き合いを反対されていたころの威圧感は薄くなったけど、道明寺の嫁!の重圧は半端なく膨れ上がってる。

必死に頑張ってついてきてるけど育ちの差って勉学だけじゃ追いつけないところは若さでカバー!

そう思えていた若輩な私。

司法修習の頃は大目に見てもらえていたところもあったんだなって最近わかってきた。

大学の頃の花嫁修業は序の口。

これから道明寺のパートナーとして公の席に出ることも多くなりそうだし・・・

TOPの顔とは違った道明寺を人目にさらして会社の私の知名度が上がるのと同じことはさせられない。

にこやかに微笑んで道明寺のそばに貸し仕えて・・・

・・・・って、私のがらじゃないんだな。

「お前はそのまんまでいいから」

私の腕をとっていつもそばで道明寺が微笑んでいてくれるから頑張れるんだって思う。

お前だから惚れたとか。

俺が惚れた女なんだから自信を持てとか。

言ってる言葉は荒っぽいんだけどまっすぐな道明寺の思いは私を元気にしてくれる。

人がいろいろ考えてる横でなんでワンコインの説明を道明寺がしてるのよ!

この流れで庶民の生活感をにおわせてどうする。

それなりのランクに合わせた生活っていうものに慣れなきゃって思ってる矢先に道明寺と食べた500円の煮魚定食を思いださせないでよ。

今ここは超一流の和食のお店。

並べられた料理も高そうな器に煌びやかに盛り付けられた料理人の腕を感じる芸術作品。

広い庭からは池の上を通り過ぎた冷やされた心地よいそよ風がふわっと座敷の中に流れ込んでくる。

ワンコイン定食を一般的世論を知る機会と位置付けてくれたお母様に救われた。

会社近くの定食屋さんじゃ代表が食べに来たお店ってことで繁盛してるとそれはまるで芸能人が来るお店的なノリ。

あの代表も500円の定食を食べるということで親近感がわいたとか・・・

若き実業家の道明寺のクールでやり手のイメージカラーが社員内では払しょくされそうだってこと、お母様が知ったらどうなるのだろう・・・。

怖い・・・

「おい、大丈夫か?」

私を覗き込んできた道明寺の心配そうな表情。

私をハラハラさせてるその張本人はなんにも気が付いていない。

でも・・・私のことをしっかりと見てくれてるんだって思える道明寺にキュンとしてる。

「そろそろつくしさんには私の代わりを務めてもらいたいと思ってるのだけど?」

代わり?

代わりって・・・お母様の代わり?

お母様は鉄の女って呼ばれてるんですよ。

私とはけた違いの女性で、威厳があって、眼力はメドゥーサ並の迫力。

見るものすべてを石にするって迫力。

代わりって・・・

どこまでが御所望?

「こいつに、おふくろの真似できるとは思わないし、させるつもりもない」

本当ならムッとしてしまう言葉も今回はコクコクと心の中で首を縦に振る。

「だれも道明寺HDの仕事を変わってもらおうとは思ってないわ。

道明寺司の妻としての仕事がありますからね。

そろそろそれを覚えてもらいたいと思ってるだけですよ」

え?

嫁?

それならしっかり道明寺に恥をかかせないように気を配って頑張るってことで・・・

今までも大した失態は見せずになんとかやってる。

まだまだだけど、それはしっかり今でも意識してる。

「つくしさんが道明寺司の妻としての役目をしっかりと果たしてくれたら私はNYで仕事に専念できるはずですから助かるの」

助かるのなんてお母様に言われたら張り切るしかない。

・・・って、私って単純かな?

道明寺HDの仕事を覚えてって言われたら畑違いで戸惑うけど嫁として道明寺の顔に泥を塗らないように頑張ろうと決めたのは

結婚を決めた時から決心してるもの。

「私で、できるのなら、ご期待に添えられるように努力します」

大きく息を吸って声と一緒に吐き出した。