迷うオオカミ 仔羊を真似る 6
5話までは序章ここからが本番!
暑い夏は熱さでぶっとばせ~♪
あと5話内で終わるかどうかが微妙になってきました・・・(;^ω^)。
ヤシの木が暑い日差しを遮るプールサイド。
芝生の柔らかい感触。
ここはリゾート地じゃなくて都内でも有名なホテルの中庭。
周りはホテルの建物で覆われて都会の騒音も完全にシャットアウトされてる。
室内児童プールからこっちのバイトに移されたのは今日の朝。
移った先が道明寺系列のホテルって言うのは移動先のホテル名を聞けばすぐにわかった。
リクライニングサマーベッドに横たわる水着の女性。
ビキニの背中のひもを外して丸見えの背中。
その背中に男性が手のひらにつけたオイルをゆっくりとした仕草で塗っている。
ちょこっと顔を傾ければサマーベッドに押し付けた胸の丸みを帯びたラインも見えてしまう。
人目が気になる私には無理だ。
その前に道明寺に背中を触れられて時点で緊張が走る。
平気な顔で道明寺にオイルを塗らせるなんて無理。
「牧野さん、これ運んで」
プールバーのカウンターの中から渡されたトレーの上にはおいしそうなパフェ。
プールに泳ぎに来て休憩してるお客さんに注文されたものを運ぶのが私の仕事。
児童プールの騒がしさはないが、二人の時間を楽しんでるってカップルが多くて目のやり場に困る。
日本人だけじゃなく外国人も目立つこの場所は日本じゃないかもって錯覚させる。
カウンターの中の高松さん。
逆三角形の広い背中が授業員の制服のアロハシャツの上からもわかる。
学生時代は水泳で日本代表に選ばれる寸前だったとかの経歴の持ち主。
私がプールに落ちた時に真っ先に飛び込んで助けてくれた命の恩人。
下駄というかカエルに似た風貌は愛嬌があって親しみやすい。
すごくまじめでいい人。
助けてもらったって恩義がなおさら私と高松さんを仲良くさせてる。
渡されたトレーを持ってお客さんのテーブルへ向かう。
「お待たせしました」
さっき背中にオイルを塗ってもらってた女性が視線だけで、少し上に向けてテーブルにパフェを置くのを眺めてるというよりは睨まれた。
「遅いわよ。パフェ溶けてるんじゃないの?」
テーブルに置いたパフェはひんやりとした器の上で冷たいく周りの空気を冷やすレベル。
上にのったチョコレートも食べればパリと音を立てるって思える。
「作り立てを持ってきましたので」
横柄に授業員を人とも思わないタイプのお嬢さま。
英徳で慣れてるけどやっぱりムカつく。
ここは仕事だと割り切って「申し訳ありません」と頭を下げた。
ツンと澄ました顔のままでスプーンを持つ手。
わざとだ!と思える仕草でプールの中に投げ込まれたスプーン。
「代わりのスプーンをご用意します」
背中を向けた私に「拾ってよ」の声に思わず振り返った。
じゃなきゃ、クビよ!
的な威圧感が無言でもその表情に現れてる。
「あなたの、置き方が悪かったから落ちたのよ」
どう見てもわざと落としてたじゃない。
英徳ならもう完全に手が出てるレベル。
「拾えばいいですか?」
「そうよ」
意地悪に上がる口角。
「飛び込めないなら本気で謝って」
その言葉に完全に切れた私はプールに足から飛び込んだ。
スプーンを探してプールの表面に顔を出す。
浮かび上がった勢いでザバッの水の音とは対照的に静まるプールサイド。
なんとなく・・・
周りの視線が・・・
私を見てる。
「牧野さん、早く上がって」
慌てた様子で高松さんがバスタオルを持って走ってくるのが見えた。
プールの監視員と違って制服の下に水着をつけてるわけじゃない。
この状況で飛び込んだら・・・
びしょ濡れになって・・・
下着が透けて・・・
高松さんが真っ赤になって差し出した手を握れるものじゃない。
慌てて首までプールに身体をつける。
できるならこのまま沈みたい。
「おい、何やってる」
え・・・?
その声・・・?
聞き間違えるわけはない声。
それもかなり不機嫌。
数メートル先のプールサイド。
サングラスをかけたくるくるパーマ。
T-シャツに短パンのラフな格好の道明寺。
どうして道明寺がこんなとこにいるの!
それも仕事じゃなくてオフのスタイル。
それもプールって・・・
誰かと来てる?
プールに一人で来るってスイミングスクールじゃなきゃないよね。
泳ぐのが目的じゃなかったら・・・・
道明寺も男だし・・・
モテるし・・・
仕事の付き合いで誘われて断れなかったとか・・・
誰よ!
道明寺に気が付いて固まった視線はありえない道明寺に慌てたように道明寺の周りを見渡して、言葉を飲み込んだ。
西田さん・・・?
少し離れた建物の影。
道明寺と西田さん。
この距離感で二人を結びつけられるのは私だけのはず。
周りに女性の影は認められずにほっとしてる。
「牧野さん」
「牧野!」
道明寺と高松さんの声が重なって、目の前に二つの腕が差し出されてた。
拍手コメント返礼
りり 様
どっちの手をつかむのか!
あとのことを考えても気持ち的にも司の手に行くしかないんですけどね。
ここは面白くいきたいなぁ。(笑)