門前の虎 後門の狼 6
こちらの坊ちゃんも大人の落ち着きで行ってもらいましょっ!
って、当分こっちの司には無理だなぁ・・・(;^ω^)
西田の呼びだしで会社に出向いた俺。
スーツに着替える間もなく普段着のまま。
V字の薄手の薄紫のセーターにジーンズ。
大学にいるはずのあいつに合わせた私服。
足元は革靴じゃなく気にいって履き慣らしたスニーカー。
某ブランドの最新モデル。
牧野がスニーカーでこんなにするのと目を飛びださせる勢いでひんむいて、店の棚から手に取ったのを覚えてる。
「10足は買える・・・」から「一か月の食費だ」と換算する貧乏性は俺の彼女としてはありえねぇぞ。
俺からしたらこのスニーカーの10分の1で履ける靴が作れること自体が不思議だよ。
開いた執務室の扉。
その先で腰を折って25度の軽めに頭を下げる西田。
「お待ちしてました」
その落ち着きを無性に乱したくなる時がある。
「何か、いいことでもあったのですか?」
「ねぇよ」
たまに仕事を離れて大学生に戻っても直ぐに道明寺財閥を背負う責任の中に連れ戻される。
「西田、お前が俺を呼びだすタイミングがいつも都合がいいよな」
「大学に行かれる時はなるべく邪魔したくなかったのですが・・・」
大学じゃなくて、いつも牧野といるときに限って呼びだすだろうがッ。
それも、これからって時に限ってのタイミングの良さ。
そうだよ、あの写真。
総二郎も相変わらずの話題を世間に提供してる。
茶道の繁栄のためにとか俺たち4人の中じゃ頭一つ飛び出したテレビへの露出度。
だから騒がれるのだろう。
少しは警戒しろと言いたくなる。
さっき見た雑誌の写真。
白黒のはっきりしないぼやけた写真がなぜか脳裏に焼き付いて離れない。
総二郎に肩ほどの背丈。
肩より上のショートヘアー。
首からの肩幅。
そこから腰もとに落ちるライン。
俺の知ってるラインと似てんだよな。
太ももから下は打ってねぇし、解析できる情報としては少なすぎる。
が・・・、
やっぱ似てんだよな。
牧野にッ。
「代表」
西田の声が俺を現実に引き戻す。
「二時間ほど会合に出席をお願いします」
「そんな、予定なかっただろう」
だからこそ今日は大学に俺は行けた。
「相手方の急な要望で、今日を外せばこの先1か月は待たせることになりますので」
「いつもは無慈悲に待たせるのに今日に限ってはやさしいだな」
なんか、魂胆あるんだろうの疑いの目で西田を睨む。
俺が睨むくらいじゃ表情を変えない西田。
飽きれるほど表情を変えず動じないやつ。
「貸しだからな」
「借りは作りませんから」
俺が何を言っても余裕で返してくる。
「上等だな」
着替えたくもないスーツに着替えさせられる代償。
西田はどう応えるのか。
俺が納得できるものを準備してもらおうか。
「着替えてくる」
部屋の奥にしつらえたワンルーム。
そこには寝起きできる空間と着替えが準備されてる。
仕事で帰れなくなる日はこの部屋で仮眠をとることもある。
「西田」
そこに向かいながらふと頭にひらめいた考え。
この際総二郎のことをこいつに調べさせようという考え。
俺の呼びかけにゆっくりと西田の顔が横に動いて俺に向けられる。
「総二郎が、女と週刊誌に撮られてる。
その写真を手に入れろ。
至急だ」
週刊誌に載る前の加工されてない写真ならもっと鮮明に映ってるはずだ。
なんとなくもやっとした落ち着かない感情。
喉の奥に刺さって取れない子魚の骨のようにさっきから鈍い痛みを放出してくる。
すっきりしなきゃ落ち着けない。
俺は・・・
あいつを疑ってるのだろか・・・
まさかな・・・
一緒にいてもなにか理由があるだろうし・・・
あいつにかぎって何かあるわけじゃないだろうし・・・
写真を確認する前から一つの結論にいきついてしまってる。
俺があいつを見間違うわけねぇんだよ。
たとえ、どんな変装や顔を隠してて。
あの横からの顎のライン。
何度も触れて・・・
手のひらで覆って・・・
何度も、何度もキスをした唇。
忘れるわけない。
「俺が着替えを終えるまでに調べろ」
西田なら10分もあれば写真を手に入れてデーターで送らせることできるだう。
西田の返事をする前に俺は部屋のドアを思い切り閉めた。
拍手コメント返礼
りり 様
司がつくしを見逃すはずがないといういつもの展開。
さてこの後は激しい嵐が吹き荒れるのでしょうか?