Happy Xmas (家族編 1)

西田さんの粋な計らいの続きはひとまず置いといて~

ここはホンワカなお話を差し込んで見たいと思います。

クリスマスソングの流れだす12月。

道明寺HD本社ビル、吹き抜けのエントランスに設置されたモミの木は、どうやってビルの中に運び込まれたのかと社員の度肝をぬく大きさ。

年々大きくなってる気がする。

それはまるで子供たちの成長に合わせるように。

今年はここにあいつらを連れて来てもいいかもな。

クリスマスツリーを眺めて目を光らせて喜ぶ子供たちを想像するだけでワクワクと気分が高揚する。

あいつらの笑顔が目の中に浮かんで頬が緩む。

一気に冬の冷たさに戻る執務室。

暖房で調整された室内は仕事する以外の無駄なものは排除したような部屋。

ドアを閉じれば浮かれた気分は瞬時に消え失せる。

仕事の始まりはいつもと変わらない西田からの報告と今日のスケジュール。

クリスマスはさすがに子供が起きてる時間内に帰れそうに調整されてるのがわかる西田の配慮。

西田の声を遮ったのは俺のデスクの上で聞こえたメール音。

デジタルフォトフレームが画像が届いたことを示してる。

駿が生まれたころにつくしが俺のデスクの上にと無理やりおいていったやつ。

泣いたとか、笑ったとか、寝返りをうったとかの駿の成長を見せたいのはわかる。

気張ってるってオムツが重くなってくるような写真を送ってきた時はさすがに苦笑した。

臭くても愛しさを感じるってものが確かにそのフレームの中に残る。

駿が大人になった時までとっておこうと思うからかいの材料。

つくしはこんな写真まで送ってきたことを覚えてるだろうか?

「最近は便利になりましたね」

上か覗くように西田が身を乗り出した。

「お前が見たいんじゃねぇの?」

「代表のお子様は私の孫みたいなものですから」

それなら少しは頬を緩めて見せろよ。

いつもの無表情の西田に孫を頬を緩めて嬉しそうに見つめる甘いじーさんは想像できねぇ。

つくしの親父さんだと眉が下がって解けてなくなりそうなゆるい顔になるぞ。

「俺はいつお前の息子になったんだ?」

「代表のような息子を持った記憶はございませんが?」

身に迫るボールを避けるようにスルリと俺の言葉を西田にかわされた。

なにか西田を焦らせるようなことねぇか?

思案してる間にもさっきからフォトフレームにはメールが届いてる。

やけに今日は多くねぇか?

画像だけでなく動画で再生されてちっこいのがやたら動いてる。

「パパ、しゃんたさん来る?」

画面いっぱいにアップで映し出されたのは舞の顔。

「随分言葉がしゃべれるようになりましたね」

フォトフレームの中を除く西田の口角がわずかに緩んだ様に見えた。

「返事しないんですか?」

「つながってるわけじゃねぇから、俺の声が舞に聞こえるわけねだろう」

これだから親父世代は困る。

西田も例外じゃないと思うとおもしれぇけど。

「え?」

ピクンと西田の眉が上に動く。

「いつもはフォトフレームに向かって、いろいろ言ってますよね?」

「え?」

今度は俺の眉がピクンと上に動いてしまった。

西田に知られてた?

誰もいない時にしかやってねぇぞ。

舞の動画が送られてきたとき西田がいなきゃ「サンタは来るぞ」と答えてた。

あいつらの声を聞くと勝手に言葉が口から出てくるんだよ。

「仕事するから邪魔だ」

これ以上西田に見られたくない展開。

「それでは私はこれで下がらせてもらいます」

感情をあまり変化させない西田に笑われてる気分。

まじめの中にわずかに変化を感じるようになったぶんだけそんな西田の気持ちが見えるようになった。

西田を喜ばす写真を送るなよ。

西田が退出した後も幾度となく届く写真と動画。

とに、暇だよな。

「司も見たいでしょ?」

そんなつくしの声が聞こえてきた気がした。

「俺も楽しんでるよ」

フォトフレームに向かってつぶやく声。

妄想にまで返事を返してる。

やべぇぞ。

去年のクリスマスの意味を理解できなかった双子も今年はサンタをワクワクと待ってるのわかる。

ここ一週間サンタのことを聞かれなかった日はない。

メール音が鳴らなくなったと思ったら鳴りだしたのはスマフォの呼びだし音。

画面を見なくても誰からのものか見当はつく。

通話ボタンを押した瞬間に聞こえてきたのは幼い声。

「しゃんた来る?」

聞こえたのは翼の声。

いきなりサンタかよ。

「ごめん、パパにサンタを連れて来てもらうって電話するって聞かなくて」

少し遠目から聞こえてきたつくしの声。

その周りで、ダメ―とかヤダ―とかぐじゃぐじゃに聞こえる幼音。

スマフォをつくしから取り上げられそうになって駄々をこねてるんだとわかる。

「おい」

「仕事中にごめん」

今度ははっきりと聞こえたつくしの声。

何とかスマフォを翼から取り戻すことに成功したようだ。

「気にするな」

無条件で俺にいつでも連絡できて会えるのはお前だけの特権。

「子供たちを会社に連れてこないか?

今日はそこまで難しい仕事は予定ないから」

俺のいないとこで楽しんでるこいつらをすぐに見たくなってる。

エントランスの巨大なツリーを子供たちに見せたい。

「舞も翼も最近はベビーカーに乗りたがらないから、走り回って大変だよ」

「心配するな。西田に相葉に千葉をつけてやる」

「それは想像を絶するベビーシッターだね」

くすくすと明るく笑うつくしの声がスマフォの向こう側からしっかりと俺に届いた。

拍手コメント返礼

りり 様

この3人がどんな子守をするのか気になるところではありますよね。(笑)