戯れの恋は愛に揺れる  3

つくしちゃんのお給仕での食事は司の皇子も楽しめたと思います。

これ食えるのか?

うまい。

このパターンは『じゃが肉』に通じるものがあるじゃないでしょうか。

なぜか庶民の料理といえば司の中じゃじゃが肉。

牛肉が入ってれば豪華な牧野家の肉じゃが。

たぶん普段は入ってないはずだから。

でもな・・・

一応姫様のはずのつくしちゃんが正体のわからない若者の前に姿を見せるのはありえないことだと・・・

ここはつくしちゃん付きの侍女が厳守して自分が司の世話をするはず・・・

あっ!

つくしちゃんを滋姫の侍女とすればもっと別な話が書けたかもしれない。

次回作はこれか?

「よく、眠れたって顔だな」

霧のまだはれぬ明け方の早朝から都を抜けだし、人里離れたこの隠れ屋に西門の宮と美馬の君は馬を走らせた。

通された部屋の奥で二人が見たのは質素な朝食をうまそうに頬張る司の皇子。

屋敷の使用人の食事でもまだ豪華に見えると思うがそれはあえて口には出さない。

「なぁ、ここには年若い姫がいたよな?」

「一晩泊まれば女房の手引きで寝所に忍び込んでけだるい朝を迎えるって言うのが一般的だよな?」

「お前らの感覚と俺は違うんだよ」

総二郎とあきらの遠慮ない言葉にお椀を啜る司の箸が止まる。

眉間にはしっかりと2本の縦しわが刻まれ不愉快な感情を示してる。

「もしかして、好みじゃないほど不細工な姫とか?」

「だから都から離れた山奥に閉じこめられた!」

司の不機嫌な態度になれてる二人は司をなだめるつもりは毛頭ない。

宥めるどころか司が都に帰らないその意図がどこにあるのか興味がわいて仕方がなかった。

「美女・・・

じゃねぇけど、かわいいぞ」

女性の形容詞を司の口から「ぶす」としか聞いたことがない二人は意外な表情で目を合わせて司をまじまじと見た。

照れ臭さを隠すように唇を噛む仕草を見せる司を見るのも初めてだ。

「類は?」

司がもう一人の自分の近習がいないことにようやく気が付いたように部屋の入り口に視線を向けた。

「桜が散るのを見てるってさ」

この屋敷で誇れるものがるとすれば庭先に咲き誇る花をつけた桜の木だけかもしれない。

散った花弁は茶色い地上を桃色に変えるほど敷き詰めらてしまってる。

かすかに響く笛の音が山奥には似合わない優雅さで聞こえてきた。

「なんだ、あいつここでも俺たちより桜に笛を聞かせるんだ」

類の笛の腕前は都随一と評判の笛の名手。

宮廷の宴で上主が類の笛を所望してもなかなかと聞かせようとしない。

久しぶりに聞いた類の笛の音に司は耳を傾ける。

「人間より桜のほうがあいつも気軽に吹けるのかもな」

ぽつりとつぶやくあきらに総二郎が相槌をうつ。

「類の笛が聞けただけでもここまで来た甲斐があるってことにしとくか」

「だったら、すぐに帰れ」

「お前のために俺らがどれだけ根回ししたと思ってんの」

皇子の身分の司が宮を一日でも空ける理由を見つけることはそうたやすくない。

あきらの屋敷に滞在することを名目として司の自由を確保したのだ。

そろそろ妃を決めねばならぬ司に一番つけやすい理由。

うんよく美作家にはあきらの妹それも双子がいる。

見合い名目の滞在。

司が妹に興味がないのは重々承知で選んだ理由。

絶対司には言えない。

笛の音色を集中して聞くことのできない理由があきらにはある。

その俺たちに帰れだと!

「帰る時はみんな一緒だからな」

珍しく声を張り上げるあきらに司はチッと不満そうに舌打ちを見せた。

笛の音に惹かれるように部屋から庭に降りたつくしは一瞬息を飲んだ。

桜の精・・・

桜の木の下にたたずみ横笛を口に当てる若君。

その横顔を目麗しいの表現だけでは収まり切れない優雅さ。

笛の音色に舞うように桜の木から散る花びらが色を添える。

すっと静かに足を一歩運んだつもりが枯れ枝を折って小さく音を立てた。

その音に笛の音色も止まる。

ちらりとつくしに向いた視線は何の感情を見せることもなく吹き終わった笛を帯びの間に挟むように戻した。

「すいません、

邪魔するつもりはなかったんですけど、あまりに笛の音が綺麗で・・・」

「司は中?」

つくしの前に進ん類は足を止めた。

息づかいを感じ取るような距離感。

さすがのつくしも女房を連れずに庭まで飛びだした自分の浅はかさを後悔し始めて言葉が出ずにこくりとだけうなずいた。

ゆっくりと家の中に入っていく類の姿を見つめながらホッとつくしは息を吐いた。

それは安堵のため息というよりは夢見心地の甘い吐息。

初めて心の奥に感じる甘い疼きのような感情。

「姫様」

廊下から呼びかける小鈴の声に夢見心地のつくしの表情は現実に引き戻された。

「若い殿方が4人もいらっしゃるんですから一人で部屋から出ないでください」

あたりを警戒しながらつくしのそばに駆けつける小鈴につくしは可笑しくなった。

昨日の夜は怪我をして助けた司をそばで介抱し食事の世話をしたつくしである。

人の手の足らないこの山奥では自分のことは自分ですることが身についている。

山菜を採りにいったっり川に魚を取りに行ったりすることを教えたのは小鈴なのだ。

そんな小鈴が今更ながら都の姫のような生活をつくしに求めようとするのがおかしくてしょうがなかった。

大体連れて帰るのなら私に世話をするように言ったのは小鈴なのに・・・

それはたぶん司を助けることをあきらめさせるように仕向けようとした小鈴の言葉。

それを逆手に取ってつくしは小鈴の小言から少しでも解放されるように仕向けようと考えている。

「一人、会ったわよ。

すごく笛が上手で絵巻から飛び出たような素敵な公達だったんだから」

「姫様!」

つくしの言葉に叱咤する小鈴の声に桜の木が驚いたように花びらを吹雪かせた。

拍手コメント返礼

スリーシスターズ 様

類君だけなくここにF4がそろったらすごいことになりそうですよね。

人だけじゃなく小動物や小鳥も魅了されそうなきがしますが・・・司君の殺気で逃げちゃうかなぁ。

類にポッとなってるつくしにいらっとする司君の流れのパターンは1000年前から一緒かもしれません(笑)

何回も見たくなる気持ちわかります。

いいとこだけ、好きな場面だか見たい私は画像を編集してスライドショーを作ってBGMをつけて再生させながらブログの更新をすることもありますよ。

本当になかなか卒業できないなぁ・・・(;^ω^)

歩くみかん箱 様

続き熱望のコメありがとうございます。

週一程度の更新でしょうか?

連載を減らして集中して書きたいんですけどね。

そんな日は来るのか!

笛が似合うのは類か総ちゃんかと・・・

ドラマでは類がバイオリンを弾いてたのでここは類に笛を持たせてみました。

絵になりますよね。

つくし姫、類君に心奪われてしまってますが、ここは類つくにはならないので~

類つくはお任せいたします。