霧の中に落ちる月の滴 16

ここから司の本領発揮!

類の記憶が戻るより先に事件が解決するとか?

司坊ぼっちゃん暴走しなきゃいいんですけどね。

 *

牧野の病室を出た俺の後ろでコツコツと響く足音。

つかず、はなれずの距離を保ちながら同じテンポで刻む足音。

リードをピンと張ったまま歩く犬の散歩。

俺は犬じゃねぇと叫びたくなる不満。

叫んだところで私は代表にご自由にしていただいてるはずですと無表情で答えるはずだ。

お前の手のひらの中での自由だと最近気がついた。

それでも今のところは我慢できる。

西田が俺と牧野のことを一番に考えていてくれるとわかってるからに他ならない。

ぷるッと震える指先を我慢するためにギュッと拳を作る。

西田を殴るためじゃない。

それよりも大事なことがるからだ。

従順で要望以上の成果を俺に見せるやつは西田だけだということを知ってる。

そして絶対の信頼だ。

こいつが俺の期待を裏切ることはない。

「こいつをことを徹底的に調査しろ」

後ろを振り返りもせずポケットから取り出して西田に渡したのは牧野の病室から取ってきた写真。

「承知しました」

15度に頭を下げた影だけが俺の視界に入ってきた。

「それとここ3か月の類と接点があった人物。

怪しい奴やこの写真の男とつながりがあるやつが類に会った形跡がないか探れ。

いなかったら、半年、一年、それ以上さかのぼってもいい」

「長年の恨みですか?」

西田のその声に足を止めて振り返った。

坊ちゃんじゃあるまいし・・・

そんな眼で俺を見つめてる西田。

1年以上さかのぼったら高校時代に戻っちまうか。

確かに4人の中で一番おとなしかった奴だけどな。

人を感情でなぐっらねぇし、恋愛沙汰での問題も噂もなかったやつ。

第一類h静香と牧野しか見てなったからしょうがない。

それでも人の恨みはどこでかうかわかんねぇだろう。

牧野だって俺の恨みから危ない目に合ったことは一度や二度じゃねぇしな。

「牧野様のことは調べなくても?」

じっと俺を見据えたまま西田が俺に問う。

「あいつのことはいい」

俺の声に無言の西田。

西田の眼鏡の奥がきらりと光ってぎくりとなる俺。

「つくし様のことは私が調べるまでもないですか。

しっかり把握されてましたからね」

なんで知ってんだ!

大学を何時におえてバイトに行った時間。

道端で言葉を交わした相手。

牧野の行動はすべて報告済み。

それは西田には内緒でつけた護衛からの報告。

ほぼ護衛の仕事というよりは探偵の仕事に重点を置いた内容。

「そのことがばれて大喧嘩してそのあとにつくし様は事故に遭われた・・・」

「なにがいいてんだよ」

「いいえ・・・」

「小言はこの事件が解決した後に言え」

そう言った俺は踵を返して前を歩く。

「早急に片付けろ」

念を押すというよりは俺への説教を回避したい気分のほうが強い。

喧嘩の内容・・・

あいつ忘れてねぇかなぁ・・・

事故にあって、入院したあいつはすげーか弱くて、俺を頼り切って意外と素直でかわいい。

喧嘩したことを忘れてるみたいだしな。

・・・・

忘れてねぇのか?

元気になったあいつが話を掘り決して俺を責める。

もし類の記憶が戻ってなければそこからまた話がややこしくなったら俺の分が悪くならないだろうか。

ここは喧嘩も元をしっかり正しておく必要がある。

不安にかられた俺は落ち着かなくなった。

くそっ!

「西田、覚えてろ!」

立ち止まって俺を見送る西田の前を追い越して牧野の病室に引き戻した。

拍手コメント返礼

りり 様

西田さんが先か司が先か・・・。

西田さんしっかり司に課題残して仕事に向かう。

そんな感じでしょうか。

ブログ読めるようになってよかったです。

スリーシスターズ 様

戯れ~は私にしたら珍しい時間にUPしましたからね。

2話読まれた方も多かったと思います。

喧嘩の原因もわかったところでお話を順調に進めていきたいと思ってます。

西田さんを相手にすると司もいつもの司になってしまうんですよね。

今回はちょっと箸休め的な内容だったと思います。

akko

蛍を眺めるお話はぴまりでもありましたね。

このお話の中では蛍の舞う庭で和歌を読むなんてあっても不思議じゃない。

どんな若を司皇子読むのでしょうね。

kachi 様

西田さんに任せておけば安心と思ってるのは司だけじゃないと思います。(笑)

相変わらずの二人の喧嘩。

司がつくしを愛しすぎるためなのでしょうけどね。

今更喧嘩の原因をつくしに思いださせる必要はないですよね。

でもそれをやっちゃうのが司のように気もします。