戯れの恋は愛に揺れる  16

つくし姫は自分が姿を消してことを収めようと必死ですが、探しだそうと司皇子も必死なの~

つくしちゃんの勘違いが解ければすべて丸く収まるのになぁ~

そうです!そうなんです!

つくしちゃんの結婚する相手は司皇子なのよ~

誤解を解くのはいったい誰?

東宮からの使いの者だという男がつくしの隠れ家を訪れたのは日が沈みかけて夕暮れどき。

こざっぱりとした衣服で小者を一人連れて目立たぬように現れた男は迷いもなくつくしの前に膝をつき、東宮の言いつけで迎えに参りましたと落ち着いた物腰を見せる。

外には女物の輿が用意されているのも見えた。

つくしはフラりと気を失いそうになるのを必死で耐えた。

見かねて手を差し伸べた小鈴の手を取るのを断ってつくしは自らの脚に力をいれた。

「どういうことでしょう?」

自分は父の屋敷で妃教育を行っていることになっている。

乳母のもとに身を寄せてることなど父親すら内緒だ。

知ってるのは小鈴だけのはずなのである。

たとえ相手が東宮でも大君でも自分の居場所がわかるはずだ。

自分を迎えに来たというなら父の屋敷に迎えをやるはずなのだ。

「あなた様がどこにいらっしゃったのか、東宮様はすべてご存じです」

つくしに否といわせぬ意思の強さを秘めた鋭い視線は迷うことなくまっすぐにつくしを見つめてる。

それでいて、この使いの男はつくしを蔑むような色は見せていない。

すべて・・・

御存じ・・・

それでいて私に迎えをよこした。

それをどう考えればいいのか。

司と一夜過ごしたことを東宮は知ったうえで私に会いたいということなのだろうか?

会えればすべてを打ち明けて婚儀の話を東宮様から断ってもらうこともできる。

罪はすべてこの自分が受けると伝えたら事は父にも司にも及ばずに収まるのではないだろうか。

そうしてもらえるように必死でお願いしてみよう。

東宮様が自分の居場所を知ってるとなればそれしか手立てはないとつくしは思い始めた。

「まいります」

「姫様」

心配そうにつくしに縋り付く小鈴に大丈夫だと言い聞かせながらつくしは小鈴に手を離すように促す。

乳母に迷惑をかけたと頭を下げたつくしはそのまま輿に乗りこんだ。

持ちあがった輿はゆっくりと大通りを進む。

碁盤の目を縫うように進んだ輿は都で一番大きな白鳳の門の前で止まった。

都に住むものならこの門の先に大君や東宮が住む宮殿があることは誰でも知っている。

誰もは近づけない神聖な場所であることも。

この門を通りすぎれば、司の屋敷を抜けだしたように簡単に抜けだせるはずがない。

もし東宮様が自分の話を聞いてくれなかったら・・・

突然そんな不安がつくしを襲う。

あのまま必死で逃げたほうがよかったのではなかったのか。

そんな後悔までもが浮かんできた。

宮廷の奥を静かに進む腰。

砂利の敷き詰められた庭にゆっくりと輿が降ろされる。

砂利を踏みしめていたいくつもの足音は遠ざかり人の気配までもつくしは感じとれなくなった。

輿の中から恐る恐るつくしは顔を見せる。

薪が燃えたパチンとはじけて飛ぶ音の中に砂利を踏むつくしの足音が重なった。

灯籠が行き先を照らすように左右にならんでつくしを照らす。

その先に傅く女官がつくしに近づいてつくしの右手をとって案内するように歩きだした。

つくしを迎えにきた男の姿を今は見つけることもできない。

通された部屋の一段高い場所は御簾が降りたまま。

わずかに聞けた衣擦れの音で人が御簾の後ろにいることだけはわかる。

御簾の前に座るように促されるままにつくしは腰を下ろして指をついてしっかりと頭を下げた。

目の前にいるのは東宮のはずである。

今から自分がいう言葉は婚儀をとりやめてほしい。

その一点だけなのだ。

それが東宮を不愉快な感情にさせたらつくしは自分だけではなく司や父までも重罪となる可能性も含んでいる。

震える唇を必死で抑えこもうとかみしめるが唇の震えは歯をうまく合わせることができないように指先にまで広がってる。

「そんなに、緊張しないで」

聞こえた声は男子にしては高い音色。

え?

するりと上がった御簾の中からは十二単で艶やかな微笑みを浮かべてつくしを見つめてる一人の女性。

「だましたわけではないのです。

弟宮の性急な進め方に少し心配になったものだから」

東宮が弟宮・・・?

ということは今自分の前にいるのは、皇女様?

いわれてみればこの婚儀は進め方は急速すぎる。

一年以上準備を進めて東宮妃を迎えるのが恒例だと聞いたこともある。

つくしのおかれた状況はここ数日でありえないほど変化してしまっている。

が・・・

今この時ほど驚きを隠せない表情で、つくしは、目の前でやさしく微笑む皇女を、あきれるほど長く見つめてしまっていた。

拍手コメント返礼

やなぎ 様

私も椿さん登場させるつもりはなくてF3の誰かを想定しておりました。

なんとなく書いてたら椿さんが登場しちゃってました。(;^ω^)

りり様

ここでおねぇ様が誤解を解いてくれたらいいんですよね。

めでたし(^^♪

スリーシスターズ 様

椿さんが登場すると安心感ありますよね。

何事もまるく収めてくれそうな予感。

yumi 様

つくしちゃんが困った時に頼れるのは椿さんが筆頭かも。

今回はこれが初対面なんですけどね。

つくしちゃんの信頼を勝ち取ってお話をスイスイと修正してもらえそいうな期待感ありますよね。

cocchann様

ご安心ください。

これ以上引っ張るつもりはございません。

横からチャチャがいらなければの予定ではございますが・・・(;^ω^)

どうなの~ぉ~。