霧の中に落ちる月の滴 22
おはようございます。
このお話あとは類の記憶が戻るだけなんだけどな~
記憶の取り戻し方はどうする!
それがただいま一番の難関となっております。(;^ω^)
今回は類サイドの視点からお話をお届けします。
類サイド久々だなぁ・・・。
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本朝7時までに申請いただいた方には返信いたしました。
ご確認をお願いします。
*「花沢類、この花瓶借りるね」
目の前でこまネズミのように動きまわる牧野。
「好きに使って」
俺の返事に背中を見せて走りだす牧野を確認して、そんな牧野を見ながら俺は小さくため息を漏らす。
牧野に遅れること2週間で退院して家に戻った俺。
まだ自宅療養の段階、さほど寝てる必要はないが傷跡は時々かすかに痛む。
「お見舞いに来た」
退院したあくる朝にはひょっこり顔を見せた牧野。
それから毎日のように大学が終わった後に牧野がやってくる。
家に届くお見舞い品。
その中の花束を大事そうに抱えて牧野は出ていった。
花瓶に移し替えた花を持って再度牧野が俺の前に姿を見せるまでそう時間はかからないはずだ。
司がよく許したね。
そんな問いかけを俺は何度となく飲みこんで胸の奥にしまいこむ。
「この花どのくらいするんだろう」
小さくつぶやく牧野の声。
食べれるものの方が良いって思ってるのがなんとなくわかる。
色気より食い気なのは、記憶がない俺の時間を逆こうして司と別れて悩んだあの頃に戻してくれる。
なくした記憶って嘘じゃないのかな?
悲しむ牧野を慰めたあのころの俺。
抱きしめた俺の腕の中で肩を震わせて泣いていた牧野。
「ありがとう」とつぶやいて顔を上げた牧野が俺に見せた必死の笑顔。
瞳の奥にはまだいっぱいの涙。
すーっと落ちた涙をすくい取って無理につくった笑顔が切なくて、愛しくて気が付くと牧野を抱きよせていた。
あのころの記憶は鮮明で、昨日のことのように覚えてる。
俺はどんな風に、つきあいだした二人を見ていたのだろう。
病院での二人を見てれば嫌でもわかった。
つなぎ直された絆は最強で、愛して、愛される恋人の雰囲気が確かに会った。
認めるまで結構かかったんだけどね。
否定したい弱い自分と現実を認める強さを捨てきれない自分。
司が牧野を見つめる愛しさを込めた瞳。
そして俺を見つめる悲し気な瞳。
それは牧野も一緒で・・・
俺の入る余地なんて見つけることなんてできなかった。
それでも・・・
今・・・
俺のそばにいてくれる牧野に喜ぶ心は正直。
それが愛情じゃなく友情でも牧野が笑顔を俺に向けてくれるだけでうれしいって思うよ。
なくした記憶の中で俺はこうやって自分の恋心を見つめてきたのかもしれない。
純粋に昔も今も牧野のことは俺の中では一番大事な女性に変わりないってわかる。
「ねぇ、花沢類、お花、ここでいい?」
サイドテーブルの上に視線を向けた牧野にうなずく。
「あっ」
毛先の深い絨毯につま先をとられて牧野の身体がバランスを崩してよろける。
「危ない」
咄嗟に出た言葉より先に身体が動いて牧野を抱きしめる。
「よかった・・・
花瓶落とさなくて」
転びそうになった自分より花の方を心配する牧野。
俺・・・今・・・
司が嫉妬して引き裂きに飛んでくるくらい牧野に接近してるんだけど。
牧野に下敷きになって倒れこんでる俺の上に牧野がいる。
「よかった・・・
花瓶落とさなく手・・・」
吐息を漏らした唇が下を向き、牧野が、ようやく俺の存在に気が付いて目を大きく開いた。
「ごめん、花沢類!
大丈夫!!」
慌てて飛び降りた牧野が俺を起こそうと花瓶を横に置いて両手を差し出す。
「心配したのが、俺でもなく自分でもなく花瓶なんだ?」
「だって、もし割ったら弁償できないもの」
「どんな、高価なものだって俺には牧野以上のものはないけど」
俺の言葉に固まった牧野。
その手に握られていた俺の腕は滑り落ちてもう一度腰を床に落とす。
「ご、ごめん」
牧野がどもりながらも俺の腕を握って今度は一気に引き上げて立ったせてくれた。
真っ赤な頬の上の見開かれた瞳は落ち着きなく彷徨って俺を見るのを避けているのがわかる。
「そろそろ、返してもらおうか。
俺に取ったらどんなものにも変えられない高価なものだ」
大股で部屋に入ってきた司が速攻で牧野を自分の胸元に引き寄せた。
「道明寺・・・っ?」
司の胸元にすっぽりと収まった牧野が戸惑いを見せながら司を見上げる。
「今度、怪我したらどこにも行けないように部屋に閉じ込めるぞ」
不愉快さをそのまま傲慢さに変えた司の声。
それでもその声の真意は牧野を思う愛情。
「牧野、大変だね」
「お前が言うなっ」
不機嫌な声は俺を罵倒しても収まらない嫉妬を見せる。
「笑うなっ」
くすっと小さく笑みをこぼした俺に司の怒鳴り声が響く。
いつもと変わらない司の態度に懐かしさと何ら変わらない俺たちの関係にくすぐったさを口元に感じる。
俺・・・
司も牧野以上に好きなのかもな。
愛情じゃなく友情だけど親愛に近い情を感じてる。
なんとなく・・・
失った記憶を呼び寄せてる気がしてきた。
拍手コメント返礼
りり 様
恋愛より友情を大事にしてる類がいいんですよね。
記憶そろそろ戻してあげなくっちゃ。
スリーシスターズ 様
類が二人の関係認めたら司君もう遠慮なしなんだから困るわぁ。
一番困ってるのはつくしちゃんでしょうか?
そうそう司も類のこと好きなんですよね。
台風はそれて進行中で全く風も雨も強くないです。
この調子だと明日の子供の運動会は開催されそうです。
miho 様
切ない類が好きなんですよね。
kachi 様
類くん考えると見守るだけの切ない恋なんですよね。
類君にも是非素敵な恋ができるといいのですがなぜかつくし以上の女性が登場しないんですよね。(;^ω^)