最上階の恋人 2+α

おはようございます。

回転扉を一周してしまうつくしちゃんに窓掃除のゴンドラに顔を拭かれそうになる司。

実は一場面で妄想しちゃった部分があるんです。

本編では描かない裏話。

もしもシリーズ。

我が家で超人気のオリキャラと言えば!

私の妄想にかぶったコメントをまい2様からいただきました。

「なんでわかった!」と西田さんの突っ込みに驚く司状態の私。

そしてニンマリ。

本編に行く前に皆様にも楽しんでもらおうと追加をここに表明。

追記から始まるお話は本編には関係ありませんが楽しんでもらえるとうれしいかな。

『12話 ないしょ? ないしょ !ないしょ!?』 のお話をよまれた方に必見!

 *

「ウップ」

入り口から中に入るつもりで回した扉。

目の前には中の様子とは全く違う外の世界。

クルクル回る回転扉は半周で止まらず一周して私を元の位置に押し戻す。

誰も・・・

気が付いてませんように・・・

一度足元に落とした視線を動揺しながらもゆっくりと上に動かす。

ちらりと見えたのは年季の入った汚れたスニーカー。

革靴じゃない・・・

紺のつなぎ服に隠れようもない幅の広い腰にポチャとしたお腹。

眼で追い終わったその姿は私以上に場違いに思えた。

「あら、あんた、どうしたの?」

愛想のいい笑みを浮かべたおばさんがじっと私を見つめる。

「見学かい?」

「え・・・まぁ・・・」

ここの最上階に用があるとは言っても信じてくれなさそうな雰囲気を直感で感じてる。

「なら、私が特別な見学をさせてあげよう」

グイと握られた腕は否応なしに私をビルの中に引っ張りこむ。

「誰でもは体験できないスリルが味わえるよ」

まさか!

それは不機嫌で人を寄せ付けないブリザードをまき散らして歩く道明寺とか?

それなら以前随分と味わってるから遠慮したい。

いやいや・・・

今の私を道明寺がそんな風に寄せ付けないわけはないんだけど。

「牧野ッ」

私を見つけて顔をほころばせて抱き付いて来られたらそれこそ周りが凍りつくかも。

人の目が多く集まるエントランス付近では遠慮したい。

「さぁ、こっちこっち」

階段を下りた地下一階。

連れてこられた事務室。

その隣の更衣室で目の前につきだされたのはおばさんが着てるものと一緒のつなぎの作業服。

「ちょうど、よかったよ。

一緒に作業をするはずだった子が、急に休んじゃってね。

一人で作業するつもりだったからあんたが手伝ってくれて助かったよ」

え・・・と・・・・

私…手伝うって言ったっけ?

言ってないよ~

30分後には道明寺に会わなきゃいけないのに。

遅刻は厳禁。

1分でも遅れたらなんて言われるかわかったもんじゃない。

「私、30分後には最上階に行かなきゃいけないんです」

「そうだね、普通見学者の最後は最上階の展望を眺めて戻るパターンだからね。

私についてくれば5分後には最上階に行けるよ」

「そうjなくてですね」

私の言葉は聞こえてないのか、聞いてないのか・・・

さっさ着替えてと作業服を押し付けられた。

それを素直に着てしまう私って・・・

もうッ。

自分で自分の人の良さに呆れてる。

地下室から一気に上がるエレベーター。

エレベーターから降りた途端に突風が私の髪を煽る。

「キャップかぶって」

目を覆うほどまで深くキャップを私にかぶせたおばさん

エレベーターの中でようやく自己紹介。

加川と名乗ったおばさんは一人で一方的にしゃべりまくる。

私が発した声は「まきのつくしと、はいとかいいえだけ。

促されて気が付くと鉄の箱の中。

スイッチを操作して動いたその箱はガタンと大きな音をたてる。

これって!

ビルの外壁に沿って移動を始めたゴンドラ。

窓を拭く道具を鼻歌交じりに操りだした加川さん。

「窓を拭くのは機械がやってくれるから私たちは拭き残しをチエックしながら操作だけだから簡単だよ」

それでも初心者には無理な注文。

風は吹くし、下を見るのは怖くて無理。

向ける視線は窓越しにビルの中を見ることになる。

屋上からすぐ下の最上階までは後1メートルもなさそう。

ゆっくりとしたスピードで降りるゴンドラ。

最上階の窓辺に見えた人影。

まさか・・・道明寺とか?

だったら笑えるかも。

「って・・・道明・・・寺?」

上からわずかに見えたのはくるっくるの髪の毛。

確かに目が合ったはずなのに道明寺は直ぐ様背中を向ける。

今見えてるのは天パの目立つ後ろ姿。

それでも道明寺だって確信できる。

「よかったね。

滅多に代表を見ることはできないんだよ。

代表を見ることが出来たら今日一日はいい日になること間違いなし」

そう言って加川さんは窓越しに道明寺の背中に泡を塗りたくっている。

「どうせなら素っ裸の代表を泡まみれにして丸洗いしたいところだけどね」

加川さんの何気ない言葉に窓越しの道明寺を見いる。

首から下は泡まみれの道明寺。

幾度となく道明寺には抱き付かれてるから、道明寺がしなやかな筋肉質の持ち主であることは想像できるけど・・・

それ以上は想像できない。

「つくしちゃん、顔が赤いけど大丈夫?

やっぱりつくしちゃんも代表のファンかい?」

「い・・・え・・・」

ファンというのとは違うし・・・

「一応・・・婚約者・・・で・・」

「はぁ?こんにゃくがどうかした?」

「いいえ・・・いいです・・・」

「さぁ!思いきり拭きな。代表に触れてるつもりで」

にこにこと笑う加川さんは勢いよく私の背中を叩く。

しょうがなく私は加川さんに言われた通りの作業に向かう。

吹き上げた窓の向こうに広がるのは広々とした執務室。

窓から離れたところでデスクに向う仕事道明寺の姿が見えた。

「仕事ができる男っていいもんだろ。

さあ、私たちもさっさと仕事を終わらせるよ」

そういった加川さんはゴンドラを下に向かわせる。

「すいません、これってあと30分で終わります?」

「終わるわけないだろう」

バカ言ってんじゃないよと加川さんは声を上げて笑った。

道明寺に怒鳴られるッ!