戯れの恋は愛に揺れる 33
つくしちゃん・・・
ここはおしとやかな姫様らしく助けが来るのを待たなきゃだめよ~
そんな性格じゃないから司が苦労するのよね。
司皇子間に合うかしら?
こうご期待!!
屋敷からあたりをうかがいながら出ていく女物の車。
その車を足音もたてずに物陰から飛び出した影が追う。
暗闇に紛れるように人気のない道を走り裏口から漏れる明りに吸い込まれるように消えた車。
行き先を確かめるとすぐにその影はかき消えたのだった。
「皇子」
ろうそくの光が揺らめいてきりりとした横顔をわずかに照らす。
片肘をついて頭を垂れる検非違使の装いの男。
「やはり、動いたか」
母上の策に納得したわけではない。
反論してつくしを連れ戻す時間がなかった司が打った手はつくしの実家を警護する部下を贈るにはあまりに遅い皇后からの知らせであった。
目に見えて反対するであろう息子にわざと知らせなかっかった母に「何かあったら母上でも許さない」吐く声。
鬼の様相ので牙をむく司に涼し気に笑みを浮かべる皇后。
周りに傅いていた女御は頭を下げたまま隠すことのできない震えの中にいた。
「案内しろ」
「皇子が自ら出向くのですか?」
ぎょっとした表情で頭を上げた検非違使の年若いその表情になんとか皇子を押しとどめたい感情がのぞく。
「皆様が集まってからにされたほうが良いかと・・・」
姫がさらわれた連絡は皇子の側近である花沢、西門、美作の若様には届けてあり宮に向ってるはずである。
「遅い」
しかりつけるような声に怒りを押しとどめるように握られた司の拳が震えるのが見えて検非違使は息を飲んだ。
「あいつらなら宮に向かうよりつくしがさらわれて閉じ込められた屋敷に向ってるはずだからな」
言葉を言い終わらないうちに司は刀を握りしめると足早に部屋を出ていく。
皇子を追うように検非違使もあとを追った。
あいつは本当に人のものを欲しがる
馬上人となった司は馬に鞭を入れながら急がせる。
つくしをさらった黒幕は国沢亜門。
双子かと思うほど自分によく似てるいとこ。
即位の順では司の次に位置する亜門は何かと司に挑戦的な態度をとる。
司の花嫁選びでは東宮妃として一番に名の上がった姫を正妃として迎えてる。
それをなんとも思ってない司には痛くもかゆくもない話なのだが、優越感に浸っていた亜門がつくしを司の妃として立ったことで、
苦々しく思っていることは推測できる。
しぶしぶ婚約したような素振りを見せればよかったのだろうが、うれしさが全身に現れるのは隠しようがなかった。
しばらくつくしに会わないようにしたのもつくしから亜門の興味を割く狙いもあった。
これで何かことを起こせば亜門の親王の位をはく奪することも可能だと読んだ皇后が動いたのも理解はできる。
が・・・
許せることではない。
ことが公になればつくしを妃に迎えることにも支障が出かねないのだ。
何事もなかったように収めなければならない。
夜が開けるまでにかたをつけなければならないのだ。
つくしが亜門と対面する前に。
亜門が司と偽ってつくしの前に現れたらどうなる。
亜門を自分と信じ込んでつくしが身体を投げ出しでもしたら・取り返しがつかなくなるのだ。
司は砂を舞いて馬を急がせる。
ひずめの音がいくつも重なって走る馬の数が増える。
ようやく自分に追いついてきた3人に馬上で目を合わせた司がフッと息を漏らすように口角をわずかに上げた。
拍手コメント返礼
yumi 様
おはようございます。最近コメ返しできてなく申し訳ないです。
そしてやっとお話の続きがかけました。
別人と気が付きゃなくては司君がどうなるか!
たまったもんじゃないですからね。
亜門とご対面するつくし姫見ものです。