最上階の恋人 30
30話まで来ちゃいました。
長いお話を書いてる方もいらっしゃるので大した数ではないですけどね。(^-^;
私の場合しっかりと話を作って書いてるわけじゃないので長くなればなるほど話がつじつまが合わなくなる可能性があります。
いつも最初と最後しか頭にはない状態で書きながら話を作っていく手法だからです。
毎日書いてるときはそこまでおかしくなることはなかったのですが、ペースが遅いと始まりの設定を忘れちゃってる!
なんだったっけ?なんて状態に陥って焦ります。
自分で書いてるのに読み返しが必要になる。
このお話も最初は司に呼び出されて会社に行ったのに、つくしちゃんはトラブルに巻き込まれて、なかなかたどり着けない最上階というのがコンセプトになってたはずなんです。
お気づきでしょうか?
実はまだつくしちゃん最上階にたどり着てないのです。
つかなきゃ終わらないはずのお話の予定だったんだけどなぁ。
司との仲はすでに進展してしまっってるし・・・(^-^;
このお話の最後は・・・
書き直し決定です。
「てっ」
鋭く痛んだ俺の鼻先。
息ができなくなるくらいに顔に押さえつけられた枕。
「なに、考えてるのよ!」
息を切らせた牧野は俺の下から這い出してキッと俺をにらみつける。
「なにって・・・考えてることは一つだろ?」
緩みかけた俺の顔めがけて飛んできた枕をさっと身体を横にずらしてよける。
壁に当たってドスットと床に落ちた枕。
あぶねぇツ・・・
あれ食らったら枕でも少しは痛みを感じると思うぞ。
「近づくなの次は枕かよ。
狂暴だな」
「狂暴なのはあんたでしょう」
俺をまっすぐに睨んだままの牧野。
ベッド上に投げ出されたままの肢体。
太ももから胸のあたりまでシーツで隠れた肌。
足先がわずかにシーツの中に隠すように躊躇しながら引き込まれていく。
白い肌が怒りのためなのか熱を帯びた柔肌は薄紅色に染まる。
ここでなに考えてるって聞くなよ。
決まってるだろうがぁぁぁ。
ここまで来ると可愛さ余って憎さ100倍ってやつだ。
「親から連絡あった後に押し倒すなんて・・・」
何を想像してるか明白な牧野。
牧野の全身を羞恥心が包み込んでるのがわかる。
そこを言われると確かにそうなんだが・・・。
俺が動揺したすきに牧野が俺の横を走り抜ける。
それは100秒10秒を切れるのではないかの速攻。
まったく全然なし。
昨夜俺の腕の中で甘えていたあいつの姿はもうない。
これから二人で過ごす夜はまだまだ続いていくわけだし、がっつく必要もねぇよな。
着替えが終わって出てきた俺の前にはいつもの格好の牧野。
「落ち着く」
ぽつりとつぶやく声に俺の心はなぜか和んでる。
いつもの牧野に一番落ち着ているのは俺かもしれない。
昨日の夜は仕事をさせられちまって休暇の気分は薄れていた。
西田がなにか仕掛けてくるまでは久々のデートを楽しむ権利はあるはずだ。
巨大な街がつくられたような船内。
牧野と二人久々のデート。
映画館も、カラオケもプールにミニゴルフ、500人収容の劇場つーのもあったはずだ。
「牧野、デートだ」
え?と大きく目を見開いた牧野の腕をとって部屋を出た。
吹き抜けの中のらせん階段。
降りたところは乗客が必ず通るエントランス。
中央で鎮座するポセイドンの像右手は天を示して航海を見守る。
きらびやかに輝く黄金色はシャンデリアの光を見事に反射してる。
全て金で出来てるて教えたら牧野、かみついたりしねぇよな?
盗まれるとか心配すっかな?
肩を並べた歩く俺たち。
牧野の歩幅に合わせる俺に甘えるように牧野が俺の腕に右腕を回す。
自然で、当たり前のように腕をくむ俺たち。
確かに昨日までの俺たちとは違う甘さ。
腕に触れる牧野の胸のふくらみ。
それを気にする様子もなくて・・・
牧野は無邪気な笑顔で俺を見上げてる。
今まで俺たちには欠けていた甘ったるさが胸の奥でほっかりと球体を作り体中を温めてくれる気がした。
忙しい日々の時間流れの中で牧野だけが俺に与えてくれる柔らかな時。
牧野を離したくない。
離せない。
大事な、愛しいやつ。
「牧野・・・」
「んっ?」
黒色の大きな瞳の中に映りこむのは俺だけ。
その瞳がまっすぐにやさしく見つめて、俺だけに注がれる愛情。
「愛してる」
一瞬きょとんとした表情が赤くなって、ドギマギとした表情で周りをうかがうように視線を泳がせる。
組んでいた腕も話しやがった。
ここは「私も」とか言わねぇのかよ。
俺の希望はことごとく裏切れるんだよな。
牧野の場合。
「おいっ」
それでも今の俺の機嫌は上機嫌。
牧野に微笑みかけた視線の先で捉えたのは背筋をピンと伸ばして紺色のスーツに銀縁の眼鏡を光らせたやつ。
西田・・・ッ。
もう時間切れかよ。
つーか。
あいついつ乗り込んだんだ?
俺より先に乗り込んだとしか考えらねぇ。
船に乗り込むと見せかけて、どっか山奥のホテルでも予約しとけばよかったのかも。
やっぱ、一筋縄じゃ行かねぇか。
「西田ッ」
俺の声にびくっと身体を震わせた牧野が後ろをふりかった。