我儘サンタの迷惑なプレゼント (翼編)
気が付けばクリスマスイブ。
毎年の恒例行事では様々なお話をお届けしていますが今回はなかなか準備ができませんでした。
常連さんからのリクをいただいたのは翼君。
最近ジュニアの話が進んでいないからなぁ・・・
その中でも影が薄い翼君と槇 すずなちゃんカップル。
だれ?って思われる方もいるかしら?
名前覚えてますか?
翼君の彼女。
始まりは『我儘な僕に我儘な君』のお話です。
今回のお話の設定はこのお話の前の設定になります。
どこまでも純な感じで仕上げたいのよ~
たまにはこんな話も書いてみたいクリスマス♪
日曜日のイブの午後。
学校のクラスの仲間でやってきた遊園地。
他のクラスからもなぜか参加者増殖で結構な人数。
「道明寺や美作君が参加してるのが原因だからね」
困ったような表情で俺を横からひょこっと覗き込む槇は必要以上に随分と近かった。
ベンチに腰掛けて園内をボケっと眺めていた俺にはいきなりのサプライズ的登場の槇。
当たり前のように俺の横に座るからどうしていいかわからなくなる。
「なんでいるんだよ」
「誘われたからに決まってるでしょ」
誰に?
そんなことは聞かなくてもわかる。
槇を誘ったのは舞に決まってる。
「舞じゃないからね」
「それじゃ、佑だ」
舞じゃなきゃ佑だって自分で言ったのに胸の奥がざわつく。
さっきまで三匹の子豚の着ぐるみに囲まれていたよな?
なんでいるんだよはその驚きの意味。
瞬間移動したんじゃないかと思わるような登場しやがって、俺を驚かすな。
「翼君~」
「呼んでるよ。いかないの?」
足元に落とした視線のまま槇がつぶやく。
「行かないって言ってほしいのか?」
槇の足元から視線をたどるようにたどりつた槇の横顔。
小顔にすっとした鼻筋。
長い睫毛がぱさっと動いて数秒閉じたままゆっくりと動く。
その動きがスローモーションのように止まって見える。
槇の唇がどう動くのか緊張して見つめる俺がいる。
行かないでなんて反応を期待してるわけじゃないからな。
たぶん・・・
全く・・・
考えてないから・・・
槇から視線をそらして俺に呼び掛けた女子に軽く手を挙げて応えた。
そのまま下ろした指先はベンチのふちをぎゅっとつかむ。
この場所から離れて遊ぶきもちにはなれない俺。
なんとなく離れたくない。
離れたくない。
もともと遊園地なんて来る気もなかったんだ。
家にいたら朝からテンション高めの母親に付き合うのが億劫だかったからだ。
家でのクリスマスパーティー。
去年は道明寺経営のホテル貸し切りでのクリスマス。
家族で楽しむクリスマスなんて久々。
料理にケーキは手作りだと大張り切りな母。
その母を落胆させるなって威圧的なオーラーを横から発揮する父親。
付き合っていたらきりがねぇし。
逃げ出したわけじゃない。
俺たちがいない方が楽しめるだろうと父さんに耳打ちしたのは兄貴だから。
その計画に乗っかった俺と舞。
舞が任せっていったから任せたのが間違いだった。
どうせ遊園地に来るなら少人数にしとけよ。
舞と佑。俺と槇で十分だろう。
「道明寺って意地悪だよね。ほかの子にはやさしいのに」
ぽつりとつぶやいた唇。
その唇からハーと吐き出した白い息は槇の広げた手のひらに吹きかけられて広がる。
俺の意表を突くのは槇の悪い癖で・・・
いつも答えに詰まる。
わざと俺に意地悪な態度をさせるのはお前だよ。
「手袋くらいして来いよ」
握った槇の手のひらは思ったより冷たくて・・・
瞬時に俺の手のひらから熱を奪う。
「冷たいよ」
驚いた表情と困った表情を混合させた槇の瞳と今日初めて俺の視線が重なった。
俺の握った手から逃げようとする槇の手のひら。
「ほんと、冷たすぎ」
その手を握ったまま俺は自分のコートの右のポケットに突っ込む。
「急に、やさしくしないでくれるかな」
「やさしくねぇし」
ポケットの中でなんとなく・・・
交互に握り替えた指先が槇のほっそりとした指に絡む。
「こっちのほうがあったかいだろうから」
ドクンと心臓が響くのをごまかすように早口で声が出る。
槇の指を離したら槇よりも自分のほうが凍えそうな気がしてきた。
槇がギュッと俺の指を握り返してくれて逃げないことにほっとしてる。
舞と佑が俺たちの数メートルまえで楽しそうに笑ってるの見える。
時々俺たちに手をふったり一緒に着ぐるみに触れたり、写真を撮ったり。
子供みたいにはしゃいでる。
二人の姿の中に俺と槇もって空想がかさなる。
「どうかした?」
会話もなく無言の時間にいたたまれなくなったような声が聞こえた。
「何でもない」
「また、意地悪になった」
つまんなそうな表情がクスッと小さく唇を動かす。
それだけのことで心がフッと軽くなった感覚。
「槇、今年はプレゼントやるよ」
槇の小さな手を包む手袋。
少し遅れるけど許せ。
「行くぞ」
ポケットから槇の手とつないだまま手を出して、舞と佑の二人のもとに俺は駆け出していた。